内容説明
いま日本でいちばん愛されている仏像―奈良興福寺の阿修羅像。折れそうに華奢な肢体に、憂いをふくんだ口元、遠くを見つめる眼差…その少年のような姿かたちの仏像に面影を刻まれた男がいた。藤原氏の一族に生まれながら、光明皇后、藤原仲麻呂らの専制を憎み、打倒藤原氏に起ち上がった橘奈良麻呂。みずからの出生の秘密に苦悩し、謀叛を企てた罪で非命の最期をとげた奈良麻呂の生涯を描く壮大な古代ロマン。千三百年の時空を超えて、阿修羅の物語がいま甦える。
著者等紹介
梓澤要[アズサワカナメ]
1953年、静岡県生まれ。明治大学文学部史学地理学科(考古学専攻)卒業。93年、「喜娘」で第18回歴史文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちゃとら
39
阿修羅像のモデルは橘奈良麻呂の幼少期の顔だったと言うお話。公明皇后が酷い女で描かれているが、他の本では優しい人だったような、どっち⁈最後は橘奈良麻呂の乱で終わる。先日の奈良旅の後なので、阿修羅像も、薬師寺もリアルに楽しめました。2024/12/09
鍵ちゃん
17
今日本で一番愛されている仏像。奈良興福寺の阿修羅像。折れそうに華奢な肢体に、憂いを含んだ口元、遠くを見つめる眼差し…その少年のような姿かたちの仏像に面影を刻まれた男がいた。藤原氏の一族に生まれながら、光明皇后、藤原仲麻呂らの専制を憎み、打倒藤原氏に起き上がった橘奈良麻呂。自らの出生の秘密に苦悩し、謀反を企てた罪で非命の最期をとげた奈良麻呂の生涯を描く壮大な古代ロマン。1300年の時空を超えて、阿修羅の物語がいま蘇る。大河を見たような壮大な話でした。政を行う人は冷淡で腹黒くなければ行けないのか。2021/03/14
KT1123
7
奈良時代の仏師田辺嶋は、出自のことで悩んで荒れていた泉王子をモデルに阿修羅像をつくる。泉王子は長じて橘奈良麻呂となり、父の橘諸兄を扶けて聖武天皇御代の政治を行おうとするが、皇后光明子と藤原仲麻呂に阻まれて思うようにいかず、聖武天皇の薨去後、政変を起こそうとして頓挫、拷問死する。奈良時代ものを読んでいても、サラッと流されることが多い気がする橘奈良麻呂の変を、恥ずかしながら初めて意識したかもしれません。怒りと哀しみのないまぜになった少年のような阿修羅像の表情の理由、納得できたように思います。2024/06/27
若黎
5
読みやすいけど、なーんか薄い感じ。2023/10/15
真理そら
4
「白蓮の阿修羅」(篠綾子)も阿修羅のモデルから話が始まっているが、この作品と物語の中心はかなり違う。阿修羅像は人間的な表情がある美しい仏像なのでついモデルをイメージしたくなるのかもしれない。作品の中心は橘奈良麻呂だが、この人物も謎が多い。本作は同母兄妹の子のようでありながら実は…という設定だった。光明子の描き方が持統天皇なみなのがおもしろい。奈良麻呂が実は生きていたという想定の「檀林皇后私譜」(杉本苑子)を思い出して再読中。2017/06/11