内容説明
デリダは、ソーカルとブリクモンが真面目であったかどうかを問うかわりに自分の弟子たちが真面目であったかどうかを問うべきだったのではないか?ソーカルとブリクモンの『「知」の欺瞞』事件を論じ、哲学の本当の敵を名指す。
目次
1 人文系知識人に「科学的である」と見せる技術について
2 人文系知識人に科学的教養が欠けていることが、この惨禍の真の原因か
3 いかにして濫用の張本人が犠牲者へ、そして告発者へと変貌するか
4 無知であることの利点、ならびに一種の高度な理解と見なされる混同
5 ゲーデルの災難、あるいは不完全性定理を我田引水する哲学者の技術
6 「貴様も同じだ!」という論法
7 哲学の本当の敵は誰か
8 ソーカル事件とその後―教訓は理解されるのか
9 批判の自由なき思想の自由?
著者等紹介
ブーヴレス,ジャック[ブーヴレス,ジャック][Bouveresse,Jacques]
1940年フランス生まれの哲学者。パリ第一大学教授等を経て、現在コレージュ・ド・フランス教授。フランスにおける分析哲学、科学哲学の第一人者である一方、フランスのポストモダン哲学に対しては厳しい批判を続けている
宮代康丈[ミヤシロヤスタケ]
1974年生まれ。政治哲学専攻。慶応義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。現在、慶応義塾大学総合政策学部非常勤講師
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感想・レビュー
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白義
9
ソーカル事件を真摯に受け止めて、健全な精神、堅実な思考に基づく哲学のあり方を目指すために書かれた、哲学者からのポストモダニズム批判。ゲーデルにせよなんにせよ科学的概念をアナロジーとかメタファーに使うのはそんな簡単ではなく、埋めなきゃいけないステップがあるし、科学者対哲学者という見方もだめで、つまるところそういう批判に耳を傾けない態度が思想を殺すんだよー、と、的を射た指摘をしている。哲学というか、ヴァレリーのような人文、教養の伝統を守るかのような姿勢に感銘を受ける2012/01/21
iwri
5
哲学・思想による科学・数学概念の濫用については、これだけソーカル事件が人口に膾炙している以上、特に言うことはないと思うが、著者が科学・数学(いわゆる理系的)概念だけでなく、(いわゆる)文系的概念の濫用をも暗に含めて示唆している点は興味深い。フランスの言論の状況については全く知識がないので、著者の批判にどの程度の妥当性があるのか判断できないが、日本における極一部の言説を見るかぎり、それなりに納得できるがある。2012/01/21
魔魔男爵
3
フランス現代思想家を詐欺師と糾弾した『知の欺瞞』へのフランス科学哲学界からの援護射撃。フランス思想界はマスゴミと結託して思想のスターシステムを行っているという指摘に唖然とした。アイドル歌手は歌がヘタでもスターとして作られる事が可能。フランスは同じ事を思想家で行っているので、中身の無い詐欺思想でもメジャーになれるのだと理解出来た。著者はソーカルはポパーほど実証主義反証主義に傾いてないと分析しているが、私はソーカルはポパーを認めていると理解している。哲学者はポパーとウィトゲンシュタインだけ居れば良い、他不要2013/04/27
mada
2
ムージルの引用が面白かった2024/11/27
おちこち
2
フランスの哲学者による『「知」の欺瞞』と同様の現代思想における科学用語の誤用・濫用や思想家の思考に対する厳しい批判を丁寧な議論の中で行っている。特に「哲学書や思想書に使われている科学用語は文学的メタファーやアナロジーである」といった現代思想家たちの反論に対する再批判が中心となっている。フランスの哲学事情を考える上でも、また翻って日本の哲学・思想業界を考える上でも重要な書物。2013/12/08