内容説明
西欧精神の形成に聖書の概念とイメージはどのように寄与したか―。この探求に生涯をかけた20世紀の知の巨人が、「創造」という概念に取り組んだ3つの講義。フライの主著で展開される中核的着想が本書で簡潔に提示されている。神学、文学、美学、社会思想等の領域を横断する雄大な構想力。
著者等紹介
フライ,ノースロップ[フライ,ノースロップ][Frye,Northrop]
1912‐1991。カナダの文学研究家・文学理論家。トロント大学で哲学と英文学を専攻した後、同大の神学校に進みカナダ合同教会の牧師資格を得た。母校の英文科で教鞭を執り、学科長、学長等を歴任。シェイクスピア、ブレイク、エリオットらの解釈に新機軸をもたらした
高柳俊一[タカヤナギシュンイチ]
1932年生まれ。上智大学文学部、フォーダム大学大学院(博士)、ザンクト・ゲオルゲン神学院を経て上智大学文学部教授(英文学)。現在、同大名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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∃.狂茶党
6
世界は絶えず創造される。 現実はあぶくの如くある。 作品を生み出すことと、神が語ることは共に創造であり、生きることは読むことであり、読むことは再創造だ。 人間を特権的なものと捉える、キリスト教的価値観は、読むこと、「言葉」で世界を解釈するのが人間だけだからってことに、関係するのだろう。 「光あれ」そこから始まったことになるが、 世界の始まりにはきっかけがあったのだろうと考えるのは、当然のことだし、神は世界に含まれるのか、神自身は神に創造されたものか? 2023/01/17
akuragitatata
0
芸術に対して宗教的な情熱を抱く時、それは宗教的であれ、そうでないのであれ、それらが芸術のもつ社会的な機能への期待である。神が天地を創造し、休み、人間たちの身勝手さにあきれ果てていたあとに、ミルトンはその天地を創造したあとの世界をさらに細やかに再創造し続けた。信仰がもたせる細部のあり方は、宗教的な素材であれ、そうではないのであれ、そこに人倫とでも呼ぶべき何かを発生させ、それに失敗すると社会的リアリズムになって全部こける、といったことが言いたそうにしている本。フライは面白いなぁ。2017/06/27