内容説明
上場企業『ザイゼン』の社長財前彰太は、妻の由布子、娘の美華と三人で幸福に暮らしていた。ところが、世間を騒がす女性拉致事件のニュースを見かけ、彰太の心に不安が兆す。その快楽殺人者の手口に覚えがあったのだ。十八年前、反対を押し切って由布子と結婚するため、そして伯父の会社を奪うため、彰太はある“罪”を犯した…。人間の悪と因果を暴く衝撃のミステリー!
著者等紹介
宇佐美まこと[ウサミマコト]
1957年、愛媛県生まれ。2006年「るんびにの子供」で第一回『幽』怪談文学賞短編部門大賞を受賞。17年『愚者の毒』(祥伝社文庫)で第七〇回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
machi☺︎︎゛
141
「ザイゼン」の社長の財前彰太は過去にある罪を犯しながら今は妻と娘と幸せに暮らしていた。ところが娘の美華が居なくなり同時期に女性拉致事件が起こり彰太は不安になる。美華が居なくなる少し前から妻がハマりだした瞑想の世界も何かが繋がっているようだけどなかなか掴めない。次から次へと出てくる新事実が盛り沢山で最後までずっと驚きで楽しめた。2021/12/07
イアン
127
★★★★★★★★☆☆2021年にドラマ化された宇佐美まことの長編サスペンス。若い女性を拉致・監禁し殺害するという連続猟奇事件が発生する。被害者の衣服や身体の一部を家族に送り付けるという手口は、不動産会社を経営する彰太が18年前に関わったある事件に酷似していた…。人生を変えるために犯した18年前の罪と、忽然と姿を消した愛する一人娘。それは偶然か、それとも因果応報か。狭い範囲内で人物がリンクするためミステリとしての難易度は高くないものの、張り巡らされた伏線は見事。一番驚いたのは著者が女性だと知った瞬間でした。2023/04/17
アッシュ姉
91
すべては自ら犯した罪の報いなのか。過去の事件と因果応報が交錯する宇佐美劇場。観客の私に見えていたのはほんの一部だった。財前一家の行く末を案じていたが、あの人もこの人も~な展開に。終盤に次々と明かされる驚きの真実、止まらない負の連鎖。終わったと思いきやまだまだ続き、ドロドロぐるぐる疲弊する。いくらなんでも繋がり過ぎではと思わないでもないが、どんどん読まされたさすがの宇佐美さんだった。2022/03/03
オーウェン
81
冒頭から不穏な誘拐話に始まり、報道に思い出す事がある彰太。今の社長という地位に就く前に、人探しをしていたことと酷似しているから。その彰太の娘がバレリーナを辞めた後に、登校拒否や家出を繰り返し素行が酷くなる一方。宇佐美さんのイヤミス全快なミステリ。とにかく出てくる人物ほぼすべてがダークな感情を持ち合わせており、お前もかというくらい狂気をはらんでいる。終盤は誘拐の顛末から、出生の秘密。そして誘拐の真犯人まで怒涛のように明かされる。犯人が予想できる類いなのは勿体ないが、イヤミスとしてはかなりの底意地の悪さである2022/06/23
本詠み人
55
『ボニン浄土』『愚者の毒』に続き、宇佐美さん3作目。「(あの人は)鏡なのだ。誰もが隠し持っている昏い思いを素直に映し出す鏡。目を逸らそうとしても許さない、魔鏡」また、因果の深淵をのぞき込んだよう。18年前、由布子と結婚するために犯した罪。幸せな生活をおくる中でいつも心の底にある暗い過去。次々と明かされる登場人物たちの隠された顔。それぞれの罪が不思議な因縁によって膨張し弾ける。こうなるしかなかったの?長い長い物語を読んだように今、心も身体もいっぱいいっぱいだ。人の業の怖さ、仄暗さに震えた。2021/09/08