内容説明
大阪・梅田の雑居ビルの屋上、「合田接骨院」で働く姉妹は秘密を抱えていた。過去から逃げるように東京へ出た姉・恵は「いずみ」と名乗る少女に出会う。「殺される」と怯える少女に妹・歩の面影を見て放っておけなくなった恵は行動を共にするが、ある日いずみが大怪我を負う。痛々しい傷跡を見た恵は“身体の声が聞こえる整体師”合田力を訪ねるよう、いずみを送り出すが…。
著者等紹介
近藤史恵[コンドウフミエ]
1969年、大阪市生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒。93年、『凍える島』で第四回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。2008年に『サクリファイス』で第十回大藪春彦賞を受賞。19年に『スーツケースの半分は』(祥伝社文庫)で第十三回エキナカ書店大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
83
読む順番を間違えていたシリーズも3作目を読んで、とりあえず落ち着いた。本作では合田力の出番は少なかったが、別の展開で心を打つ内容だった。合田接骨院の受付で働いていた恵が、突然行方不明になってしまった。恵と歩はそれぞれに悩みを抱えていた。過去から逃げるように東京に出た恵はいずみという少女に出合う。何か怯えているいずみに面倒を見ざるを得なくなる。本作は合田が体を治療するのではなく、心の傷を癒す物語になっていた。他人の無責任な言動がどれほど人を傷つけるのか。抑えるテーマはしっかり押さえた仕上がりになっていた。2021/02/13
美登利
76
合田シリーズ3作目。これは探偵物でもあったんだ。接骨院で働く姉の恵が旅行に行くと姿を消した。彼女が東京で知り合った女の子は何者なのか?妹に雰囲気が似ていて、突き放せない恵。前作で知った恵の辛い過去を引きずったまま読むと本当に苦しくてたまらない。このトラウマはもうどんなことをしても癒されたり切り離せるものではないと思う。いくら相手が死んだとしても。妹の恋人雑誌記者の小松崎と恵の章で話は進む。女の子が抱える問題は今なら多くの若者が経験してるような。このSNSの社会では一般人もすぐ批判の対象となりうるから。2021/02/24
hirune
61
恵と歩姉妹の過去が不憫すぎて辛い(;o;)本当に父親は罪深いよ。2人分の業を背負って地獄に落ちるべきだ。。恵が自分の今の幸せを許せず失踪して、そこで傷つき逃げ出した少女を拾って面倒を見ることになる。自分の中に籠って自分を傷つけても前には進めない。他人の苦しみを救う努力をすれば自分を救うこともできるのかも知れないですね。恵もずいぶん整体ができるようだから、思い切って力先生に嫁に貰ってもらって、夫婦整体師になればいいのにな☆2021/03/07
ワレモコウ
52
合田接骨院に勤める恵と歩の姉妹。姉の恵が失踪する。妹の歩の恋人・小松崎は、歩と一緒に上京して、行方を追う。一方失踪した恵は、「いずみ」と名乗る少女を匿うことになり…。 合田接骨院シリーズ第三弾らしい…シリーズ物知らずに読んでしまった。でも、それでも内容はわかったから良かった。第一弾・第二弾も読みたくなった。2023/12/26
ひさか
39
2003年9月祥伝社刊。2006年9月祥伝社文庫化。2020年10月祥伝社文庫新装版化。シリーズ3作目。整体師合田先生の過去の話も出てくるし、事件の舞台が、東京と大阪に渡り、よりスリリングに。といっても、派手なだけで、ストーリーは前作よりも単純でした。小松崎ののほほんぶりが面白い。新装版化もこれでネタ切れですが、新作に続くとうれしいです。2020/11/16