内容説明
浅草花川戸界隈には、“人情小路”と呼ばれる横町があった。戯作者を目指す可一はその辻の自身番の書役として、町内の出来事を日記に残していた。そこに綴られていたのは、一膳飯屋を営む男を衝き動かした慕情や、大好きな父親の窮地を救おうとする童女の奇跡、武士の義ゆえに添い遂げられない夫婦の絆だった―健気に懸命に生きる人々を描く、感涙必至の時代小説。
著者等紹介
辻堂魁[ツジドウカイ]
1948年、高知県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、出版社勤務を経て執筆業に入る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やま
89
花川戸町自身番日記1作目 2020.09発行。字の大きさは…中。 浅草川、一膳飯屋の女、神の子、初恋、ときの道しるべの5話。 この物語は、序章(浅草川)で自身番の事務係の書役・可一が登場し、可一が主人公かと思ったら、最初と最後以外は、傍にいるだけでした。不思議な書き方です。そして3人の女性を別々の書き方で見事に描いています。一膳飯屋の女は、寂しさを持った女。神の子は、神の子のような少女。初恋は、妖艶な女と様々な女性を描いています。🌿続く→ 2020/12/22
とし
69
花川戸町自身番「神の子」1巻。「一膳飯屋の女」「神の子」「初恋」3つの短編。浅草寺近くの花川戸町の自身番で書役を務める可一と近隣人達の物語。自身番の可一さんがあまり絡んでこないですね。 2023/05/06
のんちゃん
28
江戸は浅草寺近くの花川戸町が舞台。ここの自身番で書役(事務、記録係)を務める可一の近隣の人達の物語。辻堂先生は初読みだが時代小説の沢山のシリーズを著作され、連続テレビドラマ化もされた作品もあるという。本作は帯の惹句「人の本心は誰にもわからない。だから思い遣る-。」があらわしている様に市井に生きる人々の潔さやその思いに対する、身近な人々の人情が溢れる作品となっている。女流時代小説家贔屓の私でもこの作品には惹かれた。ビターエンドなのが現実味を感じさせ、最後は傍観者だった可一と共に切なく敬虔な思いがこみあげた。2022/07/12
のびすけ
25
浅草花川戸町の自身番に勤める可一と、そこに暮らす人たちを描いた連作もの。一膳飯屋を営む吉竹の儚い幸せ、船頭の娘・お千香の大勝負、手習い師匠の浪人の秘めた過去。どの物語も、何気ない日常をざわつかせる出来事が起こり、胸がきゅっとするような切ない結末が訪れる。どれも良かったけど、中でも微妙な音の違いで壷の中の賽の目を見通す特技を持つお千香ちゃんがお気に入り。博打で大損を出した父親たちを横に従え、賭場の親分相手に起死回生の大勝負を繰り広げるお千香ちゃんが最高に格好よかった!お千香ちゃん、元気で暮らしているかな。2023/04/17
ベローチェのひととき
20
妻から廻ってきた本。3編からなる連作短編集。浅草寺近くの花川戸町に暮らす人々に起こった出来事が題材となっている。決してハッピーエンドで終わる訳ではないところが現実感があり、人生の悲哀を感じさせる。どの話もそれぞれに趣きがありよかったが、個人的には第3話の初恋が特によかった。いつの世にも理不尽なことはあるよね。自分の尺度で振れることなく生きていくことが大事だと思う。2022/07/24