内容説明
前衛水墨画の旗手として、一躍脚光を浴びた久井ふみ子は、ライバル滝村可寿子を蹴落とし、画壇の頂点を目指す。そして、金の力に頼り、権力にすり寄っていく策略は見事、成功したかにみえた。だが、ある日、葬ったはずの過去からの復讐が、ふみ子を待ち受けていた―。格調高い芸術の世界を舞台に、渦巻く愛欲と陰謀を浮き彫りにした、巨匠松本清張の傑作サスペンス!
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
明治42年(1909)、福岡県生まれ。処女作「西郷札」が直木賞候補となり、昭和28年(1953)に「或る『小倉日記』伝」で芥川賞受賞。昭和33年(1958)の『点と線』は、「社会派推理小説」のブームを招来した。ミステリーから、歴史時代小説、そして歴史の論考など、その旺盛な執筆は多岐にわたり、生涯を第一線で過ごした。平成4年(1992)、永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キムチ
52
半世紀前の作品、貴重な未読。殺人、心理サスペンス無しで「水墨画の世界という水域」に生息する人間を俯瞰。大抵のサスペンスファンが期待する決着無しは珍しいかも。市沢が、島村がどうなって行くか。芸術とはかけ離れた澱んだ世界に若い新人を掘り込んで清新の空気を入れたのは清張の悪戯かも。2024/09/03
ナキウサギ
43
この本を読んでしばらくした頃 友人にたまたま、こう語る作家がいると紹介された。それが、佐藤優氏。現代は自己愛型人間が過度に増殖中らしい。自己愛が過ぎると自己中心的になりやがて傲慢になり、権力でやりたい放題になる、一種のパーソナリティ障害を患う。本人に自覚はないだろう、、本書もこの通り 人の恩をなんとも思わず、私が、私がと周囲に振る舞う。。でも決して強くはなく崩れやすい歪んだ愛だからいつかは、引きずり降ろされ泣き狂う。。松本清張のいつもの突き詰める勢いのない別の感じがまたよかった。2021/01/20
竹園和明
41
松本清張1970年の作品。女流水墨画家としてライバル関係にある久井ふみ子と滝村可寿子が、取り巻きの支援者らの懐に入り込んで頂点を目指す。ふみ子と可寿子は互いに相手を強烈に意識し合い、思惑を抱いて寄ってくる男達を利用しながらのし上がろうとするが…。カネを翳して寄ってくる男達の下衆な思惑に対し、その美貌と武器を最大限に利用し成り上がろうとする2人の上昇志向が凄い。ここに描かれた世界はあらゆる業界で手段として為されているものなのだろう。大きな庇護のもとでのし上がるための手段。そこを突いた松本清張の眼力が冴える。2022/12/31
うーちゃん
14
前衛水墨画の世界を舞台にした、女たちの熾烈なサバイバル。松本清張版『イブの総て』のような、華やかな芸術の世界におけるドロドロの人間模様が見どころ。昔の作品なのでさすがに前時代的な価値観だなあと思わせる部分もあるが、それでも面白い。いつの時代も、みんなドロドロがすきだもの(決めつけ)。2023/09/27
ランラン
10
2人の女流画家を中心に話は繰り広げられるが結末が何ともいえない物足りなさを感じた。意図的にそうしたのか、自分の想像力がないのかどちらだろうか。2022/05/19
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