出版社内容情報
小路 幸也[ショウジユキヤ]
内容説明
「会ってほしい人がいるの」男手ひとつで育てた娘の実希が結婚相手を紹介したいという。相手は昔住んでいたマンションの隣人、古市家の真だった。彼との結婚を祝福したい父・孝彦だったが、真の母と亡き妻の間には何か確執があったようなのだ。悩む孝彦の前に、学生時代の恋人・綾乃が現れ、力を貸してくれるというが…。父が娘を想う気持ちが心を打つ傑作家族小説。
著者等紹介
小路幸也[ショウジユキヤ]
1961年北海道生まれ。広告制作会社を経て執筆活動へ。2002年『空を見上げる古い歌を口ずさむ』で第二十九回メフィスト賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
93
ひとり娘は25歳、年頃です。その娘から「今日、お父さんに彼が挨拶に来たいそうです…」と言われた。早くに妻を失ってから、男手独りで育てた娘なので感慨も一入です。父親たるもの口には出さずとも、娘を嫁に出すのは寂しいものです。娘を奪いに来る男を静かに迎えられればいいのだが…、と自分に言い聞かせる父親。手塩にかけたひとり娘を嫁にやる父親の気持は、私も30余年前に体験しているのでよく分かります。この小説、8年前に単行本で読了。家族とは?を考える良作です。2024/03/13
夜長月🌙@読書会10周年
81
娘の結婚に向けて避けて通れないのが彼氏からの「◯◯さんと結婚させてください。」の挨拶です。自分の場合は相手の実家に行き、ご両親の前で「結婚を前(ぜん)」まで言った時にすぐさま、向こうの父親から「もう、そういうのはいいから」とさえぎられました。あの時のお父さんの気持ちが少しわかるようになってきました。私はこの小説の風に答えられたらと思います。相手を信じるかどうかの前に娘を信じていますから。2022/09/14
はつばあば
64
娘の立場、親としての立場・・どちらも経験済みでとても気持ちが伝わる。今、私が地元でのほほんとしていられるのも、「どうしても嫁ぎたくば家を捨てて行け」と。そこまで反対されるのならとお断りした。あの時遠くへ嫁いでいたら、こんなに優雅に本など読んでられなかっただろうし、嫁姑の問題も、浮気の一つや二つ等婿との修羅のような人生を送っていたかもしれない。私達夫婦の子にしては出来過ぎた娘、そんな娘が連れてきた2つ下の婿に親として反対のしようがない。ただ一つ、「娘に手をあげたら即、離婚だからね!」とは言ってある(^^♪2016/06/16
はるき
44
望んで望まれて二つの家族が一つになって、新しい門出を迎える。でも、順風満帆に結婚にたどり着ける人は稀かもしれない。小路さんらしい常識的で優しい登場人物が沢山いるが、娘より婿よりも、娘を送り出す父親が最高にカッコイイと思う。筋を通して背筋を伸ばして、後悔しない生き方をしろ。最愛の娘に道理を説ける父親の姿に感動した。困難を一緒に乗り越えていくのが結婚だという、著者流のメッセージだと思う。2016/06/22
wanichan
42
妻に先立たれて、男手一つで育てた娘から、会って欲しい人がいると言われる。父娘の関係や、愚痴や心情をこぼせる大学時代からの友人の存在で、父親の人柄の良さが溢れている。そして娘への愛情も溢れている。父親が彼に伝えた言葉は厳しかったが、これから家族になる二人への愛情のあるエールだった。2019/05/14