内容説明
「ベストの相手が見つかったときは、この人に間違いないっていう明らかな証拠があるんだ」…妻のなずなに裏切られ、失意のうちにいた明生。半ば自暴自棄の彼はふと、ある女性が発していた不思議な“徴”に気づき、徐々に惹かれていく…。様々な愛のかたちとその本質を描いて第一四二回直木賞を受賞した、もっとも純粋な恋愛小説。
著者等紹介
白石一文[シライシカズフミ]
1958年福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。2008年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で第二二回山本周五郎賞を、また2009年に発表した『ほかならぬ人へ』で第一四二回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
266
142回直木賞受賞作。現代に生きる男女の哀しさ・葛藤をうまく描いている。「なずさ」の『それでもやっぱり..なの』という一言は心に重い。冷静に見ればこうなんだが、でもこうなってしまうという人間の業のようなものを現代風の恋愛にからませて描くのが相変わらずうまい。『一瞬のとき』の選択も含めて一貫して そんな選択をしてしまう人間を著者は丹念に 描いている。初期の宮本輝の作品にも似ている。2013/02/09
Yunemo
186
白石作品のうち13作品を読了。読後、いつも思うのだが、個々人の心の中での悩み、表に出ていない悩みを、的確に表現してくれている。不思議な引力を持つ人とそれに惹きつけられる人との葛藤がにじみ出てくる表現に、いつもいつも胸を締め付けられる。これは私だけではないと思う。優しさにあふれた小説なのかな、でもそれがわからない。読後の第一感想は、まず「ホッとする」、それから「うーん」と唸る。こういう結末で「いいんだろうな」、という思いと、「いや違うのでは」という思いが 錯綜するのが白石作品。単なる私の思い込みかも!2013/01/20
Atsushi
173
3連休。天気も良いので、家内と近所で評判のラーメン店へ。カウンターで麺をすするその横顔を見る。お互いベストの相手だったのかベターな相手だったのかは分からない。でも、二人とも東海さんや黒木のような相手にはこれからも巡り合うことはなさそうだ。それで良いのだろう。まだ先は長い。第142回直木賞受賞作。2017/10/08
mariya926
129
142回直木賞受賞作品。まだまだ読んでいない直木賞作品があったんですね。しかも私の中ではなかなかのヒットでした。「ベストな相手がいたら、はっきりしたその証拠が必ず見つかる」と言いつつ、簡単に離婚を承諾したりします。匂いで確信したのかな?しかもベストか相手が•••。それでも興味深い内容でした。かけがえのない人へも、両親の不和の中で育った女性と、母親に捨てられた男性が出会いますが、ある意味婚約者が可哀想ってだけで終わらないのが凄い。両方の小説とも裕福な家庭っていうのも鍵なのかな?2024/08/28
おいしゃん
104
【直木賞作品】旅先の、群馬・四万温泉にてあっと言う間に読了。屈折した愛と、真っ直ぐすぎる愛が入り乱れる二編。屈折した方は、読んで違和感を覚える人も多そうだが、生きるとは?という強い問いかけを感じる作品で、下品な感じは受けない。著者の他の作品も読みたい、と思わせてくれる内容だった。2015/11/28