内容説明
『僕には、きみの僕への想いが手に取るようにわかる。マコ、きみを愛しているよ…』新生活に心躍らせる遠藤雅子を、恐怖のどん底に突き落とした一通の手紙。高校を卒業して十一年、差出人の児玉秀実には一度も会っていないばかりか、顔さえも覚えていなかった。だが、執拗に手紙は続き、やがて電話が…。秀実は正気なのか、それとも…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
69
小池真理子のいつもと違うテーストの小説である。ホラー色の濃い味付け。ホラー苦手の私、他の作者だったら途中放棄していたかもしれない。日頃、心理学・精神分析関係の書物を読む、という著者が描いた本作のテーマは「純潔な愛の狂気」。初心で、臆病で、純情な29歳の男を主人公に、精神の歪み「愛の妄想」を追求したミステリーである。「マコ」と「アコ」の二人の高校の同級生女性を取り違えて、追いかける男。その間違いに気づかないところが、この小説のミソだ。さすが、小池さん、ストリー構成が見事だ、怖いけど頁繰る手が止められない。2015/09/18
キムチ
50
この時期の小池作品は脂のりまくりで、読み手の心をいとも容易く揺さぶりをかける。二時間足らずで読む世界の空気、凄い。執筆者の感覚に酔わされ、読み手を自在に図っているかのよう。読み手は秀実,千世子のパラレル感覚を拒否しつつも五感が囚われて行く。周囲人物の母親、家政婦、オジサンらが凡庸に描かれているだけに、モヤがかかり、病んでいる三人の像が浮かび上がる感じ。「間違われた」は「誰が」はすぐに気づいても、「誰を、そしてどうなる!」にドキドキ。難言えば冒頭とラストに現れる男は今一つ、とって着けた感強いけど。2015/07/11
そのぼん
34
いわゆる『ストーカー』を扱った作品でした。あとがきの日付をみるとこの作品が1988年に発売されたものだったようだったので、驚きました。最後まで読んでみると、オチがもっとおどろおどろしいものになるだろうと予想していたのでちょっと肩透かしを食らった気分でした。それでも、思い込みの恐ろしさは十分実感しました。2012/10/28
ココ
32
怖かった! 小池作品初心者の私に、読友さんからご推薦のサスペンス本。純愛・狂気・優しさ・苦悶、色々な要素が織り込まれ、小説として、大変面白かった。 2017/09/07
ぐうぐう
27
エロトマニーを描いたサスペンス。高校時代に同級生だった女性に愛されていると思い込んだ男が熱烈な手紙を送るが、送られた先には別の女性が住んでいた。『間違われた女』というタイトルの所以である。伏線が周到に張り巡らされており、ミステリとして読めば、充分及第点の取れる作品ではあるが、小池真理子にしては登場人物への心理的掘り下げがやや浅く、犯人の行動原理などが説得力を持たせるための口実のように説明されていたりと、少し残念でもある。(つづく)2020/03/22