内容説明
粉河二万石の大名に出世を遂げた藤堂高虎。ところが主の豊臣秀長が逝去し、後継者・秀保は暗殺され主家が滅亡してしまう。宿敵・石田三成の謀略か?やがて強引な秀吉の政策に危惧を抱いた高虎は家康に見込まれ、秀吉の死後、徳川幕閣に参加する。武勇と智略を兼ね備えた高虎は関ヶ原で遂に三成率いる西軍と対峙!時代の先を読み、己の変革を遂げた漢の生涯。
著者等紹介
火坂雅志[ヒサカマサシ]
1956年、新潟生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経て88年『花月秘拳行』でデビュー。2009年のNHK大河ドラマ原作に『天地人』が選ばれるなど今最も注目を集めている小説家である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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W-G
318
面白い。掘り下げきれていない逸話もいくつかあり、歴史物を読み慣れている人にとっては拙速かもしれないが、これくらいのコンパクトさとスピード感が、今最も広範に受ける書き方なのかと思う。そのまま組織マネージメントやリーダーシップの手本になりそうな藤堂高虎像で、ITの起業家や政治家/官僚が愛読書として挙げそう。徳川の天下になってから失速するのではないかと懸念していたが、そんなこともなく、むしろ大成してきた高虎が凛々しくマルチに仕事をこなす様は頼もしく、大阪の陣まで一気に読まされた。今のところ火坂作品第一位。2020/05/23
アッキ@道央民
44
自分を見いだしてくれた主君の豊臣秀長と死別。跡取りも豊臣家で台頭してきた石田三成によって失ってしまい、自分が生きる道と思っていた主家が滅亡してしまう所から始まる後半。秀長への思いをひきずりながらも次は徳川家康と見極めた所は先見の目があるなぁ。時は戦国時代の終わり。天下分け目の関ヶ原、大阪冬の陣、夏の陣がクライマックス。身につけた築城の技術を売りに戦国時代を生き残り、徳川家と家臣たちとの間で悩みつつも勝ち得た信頼は大きいし、時代に合わせた生き方を身につける考え方は、コロナ禍の現代でも大事だよね。 2022/01/21
只三郎
31
時代の変化に対応出来る能力を求められているのは、今も昔も変わらない。その時代の変化に対応していった藤堂高虎。その裏には、多くの苦労があった。しかし、苦労したからこそ、他の者達が得ることができなかった人生の充実感を得ることが出来たのでは無いか。人間として大きくなるためには、その苦労を受け入れることも必要なのだろう。私に、その苦労を受け入れる覚悟があるのだろうかと考えさせられた本作だった。2016/07/16
アイゼナハ@灯れ松明の火
29
『そのような気づかいばかり重ねて、殿ご自身は辛くはないのか』『むろんだ。これが、わしの選んだ道よ』果たしてそれが本音だったかどうかは別にして、徹底していたのは確かですね。築城の才を見込まれたとはいえ関ケ原以降も、こんなに働かされていたのだとは…『滅びぬということが、すなわち勝つということだ』そうはいっても欝屈する気持ちを名城造りに昇華させたのでは、というのは穿った見方なのでしょうか。決して阿諛追従だけで生き残った武将ではなかったのだと認識を改めました。晩年は少し寂しいけれどね。2012/05/20
とし
21
戦国時代を生き抜いた藤堂高虎を主人公とした作品。生涯のうちに主君を何度も変えたので、裏切り者のイメージも強いはず。ただこの時代は、家を残すというのも一大事。自分の能力を最大限発揮できる主君を常に探していたとも取れます。最後に家康という主君にめぐり合えたのは幸せだったはず。また築城の名人としても知られていますね。宇和島城、藤堂高虎が築城したんですね。たたきあげで大名になっただけあって、人の心を読む力に長けていたような気がしました。自分に学がないと自覚していただけに、いろいろ吸収していった姿には感動しました。2016/09/15