内容説明
やきとり屋、ヤミ市、横丁、大衆酒場、下町…階級論で知られる著者が、趣味と研究を兼ねて夜毎飲み歩きながら、「居酒屋」を通じて東京、そして現代日本を考える!著者推薦の居酒屋30点を紹介!
目次
序 居酒屋から日本が見える
第1章 格差社会の居酒屋
第2章 居酒屋考現学事始め
第3章 銀座礼賛
第4章 ヤミ市の夢の跡
第5章 やきとりとは何か
第6章 国境の町を行く
第7章 下町居酒屋の越境体験
第8章 「山の手」の幻影
第9章 格差拡大と日本の酒文化
著者等紹介
橋本健二[ハシモトケンジ]
1959年、石川県生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学の後、静岡大学助教授を経て、2002年より武蔵大学社会学部教授、2013年より早稲田大学人間科学学術院教授。専門は理論社会学および階級・階層論。趣味と研究を兼ねて居酒屋めぐりをフィールドワークに。日々の成果を『居酒屋考現学』としてブログで発表、好評を博す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぷほは
8
面白かった。考現学の詳しい方法論論や著者の専門である階級論などはほぼ締めの雑炊程度の扱いで、基本は東京の居酒屋の観光案内を兼ねた見物記・観察記録となっている。また、それに並行して往年の名作映画や文化人たちのエッセイなどが傍証として引かれるため、見物記それ自体も迫ってくるような密度やボリュームはない。だがそれゆえに、まさにビールのように気持ちよくほろ酔い気分で飲み…じゃなかった、読み通すことができる。ゼロ年代格差社会論のネガティブな温度からは離れつつも、きちんと危機意識をもって書かれているとも言えるだろう。2016/12/06
Machida Hiroshi
5
本書は、著者が四半世紀以上も居酒屋に通い続けた体験を通して、居酒屋から見た日本の格差社会を考察した学問書です。とはいえ、著者が得意とする夜のフィールドワークに基づく話題が多いので、ちょっと理屈っぽい居酒屋論として楽しく読めました。本書を読むと、変遷してきた居酒屋の歴史や、居酒屋の世界にも広がる格差社会の影などがよく分かります。僕は、居酒屋を愛する者の一人として、徐々に衰退しつつある飲酒文化ではありますが、見守り続けたいと思いました。社会学の本としても、居酒屋でのうんちく話のネタ本としてもおススメします。2016/09/03
Mitz
4
“格差”•“階級”を専門とする学者が、居酒屋探訪を繰り返しながら、世相を考察している。飲酒に関するデータ(収入階層別、年代別、酒類別etc)も豊富で、さらにはヤミ市の起源やその名残にも言及しており、思った以上に読み応えあり。自分は歴史が好きで色々と本を読んできたけど、都市文化史は疎く、学習意欲を掻き立てられた。土地の事を知ると、街歩きが楽しくなるから。自分なりに“考現学”に取り組もう。…あぁ、居酒屋の事を考えていたら、なんか酔っ払った気がしてきた。こんな本を読んだけど、自分、実はほとんどお酒飲めない…。2014/12/20
Hiroshi
3
「現在の人々の財貨等を考察すれば考古学に対し考現学になる」という今和次郎の手法を使って、居酒屋を考察した社会学者の本。都市に住む日本人にとって、たまに仕事帰りに居酒屋に行くことは普通の暮らしであり、社会学の対象になる。酒税法は1㎘あたりで酒税が決まり、ビールが高税率で、焼酎はビールの1/3だ。下町では酎ハイにモツ焼き・モツ煮込みを中心メニューとする大衆酒場が多く、山の手ではビールに品の良い割烹料理をだす居酒屋が多い。高度成長時代は皆ビールで乾杯だったが、居酒屋にも格差社会が広がり、家飲み派も増えたようだ。2016/02/22
sucksuckhello
3
ただの居酒屋巡り本としても楽しめるし、現代の格差社会を独自の視点から論じてみせた本とも読める。著者の理想とする「誰もが飲み屋で飲める社会」から遠ざかってて、日本はどんどん酷い国になりつつある。2015/03/06