内容説明
安倍晋三に抜かれるまで憲政史上、最長の首相在職期間だった桂太郎。第一次桂内閣時、ロシアの南下から日露戦争に至る、わが国最大の国難にあたり、命を縮めながらも打ち勝つ。その後は、藩閥出身でありながら、その権益を否定。さらに、原敬に代表される政友会の党利党略をも否定し、新たな政治制度を築くべく、新党を立ち上げた。しかしその構想は桂の死によって潰え、日本の権力構造は今も変わっていない。桂は日本政治の何を変えようとしたのか。桂が我々に提示した問題とは何か。桂の生涯と政治活動から、現代日本の問題点をあぶり出す。
目次
第1章 若獅子、駆ける―長州藩から明治新政府へ
第2章 陸軍・長州閥の寵児―陸軍大臣就任と政界工作
第3章 国難に立ち向かう宰相―第一次桂内閣と日露戦争
第4章 近代史に輝く功績―第二次桂内閣と桂園時代
第5章 政争の渦―第三次桂内閣と桂新党
終章 国の未来を見通す目―桂が我々に提示した問題
著者等紹介
倉山満[クラヤマミツル]
憲政史研究者。1973年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科卒業、同大学院文学研究科日本史学専攻博士後期課程単位取得満期退学。国士舘大学日本政教研究所などを経て、現在は倉山塾塾長。ネット放送局「チャンネルくらら」主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
47
石破総理とは正反対の「最高の総理大臣」と言われる理由を知りたくて読んでみた。日英同盟締結・日露戦争勝利・韓国併合・条約改正などを実現したすごい人物であったことがわかった。最後は時代遅れの軍閥にしがみついた山県有朋とどんなときも自分の利権を主張する原敬などの政党政治家に対峙しながら、二大政党制を目指すものの大正政変と病気(胃がん)から短命に終わり、実現できなかったのは残念なことだと思う。このままでは参院選で勝てないことも自覚できないでいる今の自民党を見ていると、桂太郎について知っておく意義はあると思う。2025/01/09
さきん
24
長州閥に連なる人間で調整タイプということもあって目の敵にされることも多く、評価が低かったが、ふたを開けてみると軍人経験からにじみ出る豊富な経験で日露戦争を外交面で軟着陸し、日英同盟をとおして第一次世界大戦まで安定させた。経済政策面での取り組みはもっと知りたかった。原敬始めとする。反薩長派は本当に反薩長ありきで日本全体の公益まで意識が回りきっておらず、現在も政敵ありきの野党という構図で変わらない。2020/08/01
mazda
17
安倍総理に抜かれるまでは歴代1位の在職日数を誇った桂総理ですが、知名度はあまり高くないのかも知れません。桂政権時代、アジア、ヨーロッパは状況が目まぐるしく変わり、各地で勢力争いや戦争が激化します。そんな中、日英同盟の締結、日露戦争勝利、不平等条約の撤廃など、輝かしい実績を残し、現代日本の礎を築いた桂のことを、もう少し知ってもいいのかな、と思います。2020/12/18
出世八五郎
17
小説“坂の上の雲”が好きです。小説で桂太郎の名前は知っていましたが詳しい活躍は描かれていなかった。詳しく描かれていたのは軍人がほとんど。本書では日露戦役での桂の活動が分かります。司馬遼太郎などの歴史小説が好きです。最近思うのは華々しい戦闘シーンだけでなく、裏方で活動なされている方の仕事も重要だということ。桂太郎が最高の総理大臣と副題にありますが、その桂でさえ二大政党制を実現できなかった。原敬のような利権政治家が国民に支持される。政治とは大変だなと・・・この時代の課題が現在も解決されていない。嗚呼2020/09/06
軍縮地球市民shinshin
16
安倍首相に抜かれるまで長らく歴代最長の在職日数を誇っていた桂太郎の評伝。長州藩出身で山県有朋の子分から陸軍軍人として順当にキャリアを積み政界に進出。日露戦争時の首相として活躍し、その後三回政権を担った。第三次内閣は民衆の倒閣運動で総辞職。これを大正政変と呼び、藩閥先制政治を民衆運動で打倒した、というのが通説。桂は軍人よりも根っからの「政治家」だと感じた。日露戦争の終戦の手続きは見事と言うしかない。一撃を陸海でロシアに食らわせ、有利な条件で講和に持ち込んで成功した。領土割譲、賠償金が取れないという悪条件で2020/07/28