出版社内容情報
幕末の時代、戊辰戦争の会津落城を背景に、鷹の野性を愛した女の凄艶な生涯を描く。鷹の眸に魅入られた娘さよは、城下の鷹匠に嫁ぐが、戊辰の動乱はやがて鷹との幸せを奪い去る。束縛を逃れて高く飛翔するさよの魂を描く長編時代小説。
内容説明
「眸んなかに、空があるんじゃ」時は幕末、京や江戸の擾乱は全国に波及し、会津藩は朝敵として追いつめられつつあった。会津の山中で鷹の雛と出逢い、鷹の魅力にすっかり心奪われた少女さよ。ふとした縁から藩の鷹匠に嫁ぎ、戊辰戦争で男たちが留守のなか自ら鷹と向き合う日々だったが、やがて抗いようのない大きな力は、次々とさよを巻き込んでゆく…。鷹に憑かれた一人の少女が、時代の激動に翻弄されながらもたくましく生き抜く姿を描く長篇小説。
著者等紹介
皆川博子[ミナガワヒロコ]
昭和4年(1929年)、京城に生まれる。1972年、少年向け時代小説『海と十字架』でデビュー。1973年、「アルカディアの夏」で第二〇回小説現代新人賞を受賞して本格的に活動を開始。推理小説、幻想小説、時代小説、西洋歴史小説の各ジャンルを横断して多彩な作品を数多く発表している。日本推理作家協会賞、直木賞、柴田錬三郎賞、吉川英治文学賞、本格ミステリ大賞、日本ミステリー文学大賞、毎日芸術賞、第三十四回紫式部文学賞(2024年)を、それぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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秋良
19
戊辰戦争前後の会津で、鷹に魅入られた一人の少女の凄絶な人生。登場人物が絶対を求めてしまう、と後書きに書く著者は、勤勉な国民・妻・母の立場のどれもがしっくり来なかったんじゃないかと思う。鷹の寿命を半分に縮め野性を剥ぎ取る過酷な訓練と、鷹に生命を返している、と一人思う最後は厳しい雪国の物語に相応しい。作者と舞台が出会うべくして出会ったような、そういうこともあるんだな。全体を通して見るとさよの一生はあまり幸せとは言えない。でも、人からのそういう評価を突っぱねる強い生き様だった。最期の時、彼女はきっと幸せだ。2025/03/23