内容説明
乱歩の操ることば―その“みなもと”と、イメージとの“結びつき”を探る書。初出から現在まで50回近く出版された作品もある江戸川乱歩。その都度編集・校訂を加えられたテキストから乱歩の「執筆時の気分」をはかることはできるのか。それぞれのテキストを対照させながら検証する。乱歩ならではのキーワードやオノマトペについても豊富な用例から掘りさげる。
目次
第1章 乱歩を文庫でよむ
第2章 乱歩の語り―物語を支える枠組み
第3章 初出でよむ乱歩
第4章 乱歩の固有名詞
第5章 キーワードでよむ乱歩
第6章 乱歩のリライト
第7章 乱歩の片仮名
第8章 消された乱歩
著者等紹介
今野真二[コンノシンジ]
1958年、神奈川県生まれ。清泉女子大学教授。著書に『仮名表記論攷』(清文堂出版、第30回金田一京助博士記念賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
58
テキストクリティックは活字になったあとも続く。乱歩の場合、後年に自作の表記を改めたところが多いが、日本語が大きく変化する途上の時代(今もそうかもしれない)に、作家となり、自身も変化に寄与したわけである。自註が多いのも、つねに時代に合わせてアップデートしようという姿勢だったのだろう。ところでなぜ乱歩なのか? 少年探偵シリーズなど、ジュブナイルへの注意を強調し、文献紹介にもページを使うなど、著者の乱歩ファンぶりがうかがえる。できれば今後、作品のリライトに関する実態について、詳細が解明されたらと思う。2020/06/12
でかぱんちょ
26
【図書館本】明治末から昭和を生きた江戸川乱歩は数多くの作品を残し、今日まで色々な出版社から文庫、全集等様々な形で何度も出版されてきましたが、時代と共にその言葉遣いが乱歩本人や校正によって変化してきました。本書はその研究本といえる一冊です。私も著者と同様、少年期に少年探偵団シリーズにハマって以来の乱歩フリークなのでかなり興味深く読み、懐かしく感じましたが、そうでない方にはちょっとマニアックすぎるかなぁ(笑) 2020/10/03
Gen Kato
4
乱歩ファンなので、各社文庫&全集における言葉や表現の違いは気になっていました。そしてあの独特のオノマトペ!「ドキドキ光る」とか「ムクムク」とか「ネットリ」! これこれこれ、これって乱歩だよねと嬉しがりつつ読了。また乱歩を読み返したくなっちゃった…2021/12/19
首ちゃん
2
こういう比較文は面白いなぁ!ちょうど底本が異なる書籍をいくつか所有していたので読了後に確認してみると、今までなんの気なしに読んでいた単語も、実はルビが消されたものだったのではないか気づく。(例:双生児/初出ルビ:ふたご) 読点やルビによる読み方の補助等は、読み手(少なくとも私)の読書リズムに関わってくるので、次に読む乱歩は実際に手に取って確認しなければ… 「ハハハ……」(愛)2025/01/14
fujinomiyamai
2
以前から気になっていた出版社による表記の違いや変換。他にも初出と全種の違い、特徴的で代名詞のオノマトペ等。乱歩を読み解く為のキーワードがたっぷりと入っている。 乱歩好きには必読の1冊であり、値段も内容と比べると驚く程に安い。 流石は乱歩と言えばの春陽堂書店である2020/07/04