出版社内容情報
日本軍に切り落とされた亀神の首、城壁にかけられた三百年のマジナイ、湖に暮らす龍の母子、祖霊が眠る山に隠された黄金郷。無縁仏の怨霊に異神、義民に逆賊、西洋の「文明人」と原住民の頭目、帝国の支配に抗して蜂起した匪賊……。大国による支配の痕跡と土着の文化が絡み合う、神々の楽園・台湾のディープ・サウス。歴史と伝承の狭間にある数々の奇譚から、すでにないのにそこにある、台湾の「いま」へと迫る17章。各章末に怪談コラムを付す。
装画:Croter 装幀:鎌内文
内容説明
神々の楽園、台湾のディープ・サウスへ。歴史・文学・伝承から南台湾の複雑な「いま」を読み解く。
目次
羅漢門の皇帝陛下
客家と仮黎 よそ者たちが唱った故郷
清あるを知って日本あるを知らず 六堆客家興亡史
左営旧城三百年のマジナイ
高雄版ドラゴンクエスト 曹公と龍の母子たち
伝説の黄金郷を探して
浸水営古道クロニクル 忘れられた騒乱
亡霊たちの眠る町 タイワンザルと博物学者
〓濃渓サバイバル 帰ってきた紅毛の親戚と合従連衡するマイノリティ
瑯〓八宝公主譚 カミさまとなったおひいさま
1871漂流民狂詩曲
ワタシハダレ?台湾出兵と忘れられた拉致事件
「鬼」をもって神兵となす
神を燃やす
土匪と観音、ときどきパレスチナ
フォルモサ水滸伝
生きべくんば農民と共に、死すべくんば農民のために
感想・レビュー
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buuupuuu
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台湾在住で、現代台湾文学の翻訳などを手掛ける著者による、歴史探訪エッセイ。南台湾、特に高雄周辺を舞台にした、おそらく比較的マイナーであろう出来事を扱っている。歴史的に台湾は、中国大陸やヨーロッパ、そして日本などの様々な外部勢力の介入に曝されてきたが、内部においても、原住民の様々な部族や、大陸から渡ってきた閩南人や客家人などが分かれて暮らしており、かなり混沌とした状態だった。祭事や遺跡に残された、諸勢力間の交流やディスコミュニケーション、支配勢力の横暴、人々の願いや独立不羈の精神の記憶が語られている。2025/07/16