出版社内容情報
私たちはみな、それぞれの人生という物語を生きている。そのなかで他者と関わり自己を解釈することで、アイデンティティは紡がれ、人格は陶冶されていく。
責任を引き受けるとは、その人格を通して過去を省察し、その姿勢を未来へと向けることである。物語的責任は他者との関係性における許しと約束によって深められ、自己責任論を超えた、互いに支え合う「弱い責任」へと?がっていく。
内容説明
われわれは自分の人生の物語を生きている。物語のなかで自己を解釈することでアイデンティティは紡がれていく。物語的責任は他者との関係性における許しと約束によって深められ、自己責任論を超えた互いに支え合う「弱い責任」へと繋がっていく。
目次
第一章 伝統的責任概念の構造
第二章 決定論
第三章 二階の欲求説
第四章 物語的責任
第五章 回顧と訂正可能性
第六章 許しと約束の力
第七章 物語の核
著者等紹介
戸谷洋志[トヤヒロシ]
1988年東京都生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。専門は哲学、倫理学。法政大学文学部哲学科を卒業し、2019年大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。ハンス・ヨナスの研究で学位取得。2015年「人類の存続への責任と『神の似姿』」で涙骨賞奨励賞受賞。同年「原子力をめぐる哲学」で暁烏敏賞を受賞。2022年『原子力の哲学』でエネルギーフォーラム賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
108
責任と物語という意外な組合せに興味を覚えて手にした。自由意志を前提とする伝統的責任概念に対して、自己を物語化して解釈をする「物語的責任概念」という考え方がユニーク。責任を引き受けることは、物語の訂正を要求するが、その訂正において「許し」と「約束」が救済策となるというアーレントの指摘が鋭い。不可逆性への救済が許しで、不可予言性への救済が約束なのだと。「主人公としての自己」という本書の結論には異議もあるが、強者の論理で自己責任論を振回す風潮の中で、戸谷先生が提唱する「弱い責任」や「物語的責任」に救いを感じる。2025/02/07
brzbb
1
アーレントを引用して、行動は他者からの許しによってしか終結しないと論じる部分は興味深かった。たまたま観た『ブリンク・トゥワイス』に「許しなんて幻想だ」という男(クソ野郎)が出てくるので。ただ、決定論が否定する自由意志と両立論者のいう自由意志は別のものなのに、なぜ両立論者は自由意志という言葉を使いたがるのだろうか。ハムレットがいまでも悩み続けているように、決定論的宇宙でも人は選択に悩み決断することができる。2025/04/18
name
1
よく分からなった2025/02/26
Go Extreme
1
概念と哲学的枠組み: 伝統的責任概念 自己責任論 強い責任と弱い責任 道徳的責任 自由意志と責任 決定論と責任 責任の主体と倫理 責任と行為: 自発性と責任 自己理解と行為の評価 行為とその帰結 責任倫理と信条倫理 回顧と責任の引き受け 決定論と自由意志: リベットの実験 アンスコムの意図的行為論 行動の予測可能性 自由意志の再定義 物語的責任と自己理解: 物語とアイデンティティ 行為の物語的構造 物語の訂正可能性 許しと約束の倫理: 許しの力 信頼の形成と約束 社会的和解 物語の核心と倫理的選択2025/02/15