教養の思想―その再評価から新たなアプローチへ

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  • サイズ B6判/ページ数 274p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784390604413
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0030

出版社内容情報

混迷の時代にこそ「教養」の復権を語ろう!
本来、教養とはハビトゥス(身体化)されたものをいう。
河合思想を通じてその新たな在り方を問う。

 本書は、河合榮治郎の復権および全体像の究明を目的として参集した河合榮治郎研究会の活動報告書である。二十年前、河合の謦咳に接した門下生と、河合の著作を通じてその思想に共鳴した戦後世代の青壮年を中心に発足した本研究会の研究活動は、冷戦構造の終焉、バブル経済の崩壊、そして、「教養」の衰退などの内外情勢の変化に伴って生じた自由主義・理想主義思想の再評価の潮流に乗り、教育学・政治学・哲学・歴史学をはじめとする研究者を新たに巻き込んで発展を遂げた。二百人を越える人々が結集した一九九四年二月の没後五十周年記念集会(於神田学士会館)以来、毎年一~二回のペースで開催されてきた大会および研究発表会をはじめとする活動が本書の骨子となっている。
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目 次
 まえがき 松井慎一郎
第I部 その今日的意義
 日本リベラリズムにおける河合榮治郎 武田清子
 今甦らせるべき自由主義の思想 粕谷一希
 理想主義者の「意志」 伊原吉之助
 河合教授と同時代の自由主義者たち 芳賀 綏
第Ⅱ部 教養としての河合体験
 企業人にとっての指針として 伊藤淳二
 鶴見祐輔と河合榮治郎 阪谷芳直
 河合先生と理想主義 松本久男
 教育現場に生きる河合榮治郎 西谷英昭
 ドイツにおける河合榮治郎 川西重忠
第Ⅲ部 「教養論」への新たなアプローチ
 教養の復権と河合榮治郎 竹内 洋
 河合榮治郎と学生叢書 渡辺かよ子
 河合榮治郎とT・H・グリーン解釈 行安 茂
 河合榮治郎とバーナード・ボザンケ 芝田秀幹
 政治学者としての河合榮治郎 郭 煥圭
 河合榮治郎と柏会 松井慎一郎
 あとがき 川西重忠
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執筆者一覧(河合榮治郎研究会)

武田 清子(たけだ きよこ)国際基督教大学名誉教授
粕谷 一希(かすや かずき)『中央公論』編集長などを経て、現在評論家
伊原 吉之助(いはら きちのすけ)帝塚山大学名誉教授
芳賀 綏(はが やすし)東京工業大学名誉教授
伊藤 淳二(いとう じゅんじ)鐘紡株式会社名誉会長
阪谷 芳直(さかたに よしなお)尚友倶楽部常務理事。2001年9月3日急逝。
松本 久男(まつもと ひさお)元茨城銀行頭取
西谷 英昭(にしたに ひであき)大阪府立高等学校教員
川西 重忠(かわにし しげただ)ドイツ・ベルリン自由大学東アジア研究所客員教授
竹内 洋(たけうち よう)京都大学教授
渡辺 かよ子(わたなべ かよこ)愛知淑徳大学教授
行安 茂(ゆきやす しげる)岡山大学名誉教授
芝田 秀幹(しばた ひでき)国立宇部工業高等専門学校一般科専任講師
郭 煥圭(かく かんけい)東京国際大学教授
松井 慎一郎(まつい しんいちろう)和光大学、関東学園大学講師、早稲田大学本庄高等学院講師
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まえがきより
……インテリ層のモラル低下と、大学における教養部廃止、学級崩壊、出版不況などの教育・社会問題が絡んで、ここ数年、「真の教養とは何か」「教養復興はいかにして可能か」といった「教養」をめぐる論議が盛んとなっている。現代の代表的教養論者である歴史家阿部謹也は、近著『学問と「世間」』(岩波新書、二〇〇一年)の中で、「教養とは自分が社会の中でどのような位置にあり、社会のために何ができるかを知っている状態、あるいはそれを知ろうと努力している状態である」と定義付けている。「教養」のあるべき姿を主張する者の多くに共通しているのは、阿部の定義と同様、上昇志向を補完するための手段や単なる知識・装飾としての「教養」ではなく、それを身に付けることで、自己やそれを取り巻く社会を認識し、現実の具体的行動に結実できる「教養」を主張している点である。すなわち、自分の人生や行動にフィードバックさせることのできる「教養」が求められているのである。

 二〇〇一年、生誕一一〇周年を迎えた河合榮治郎(一八九一~一九四四)は、『学生叢書』や『学生に与ふ』などのベストセラーを著した、「昭和期教養主義」の代表的思想家として知られる。河合のいう「教養」とは、余暇に自分の専門以外の学問の書を読んだり、美術品や音楽を鑑賞したりする「有閑人の安易な閑事業」ではなく、「自己が自己の人格を陶冶する」という「雄々しいがしかし惨ましい人生の戦い」であった。その目指すべき「人格」とは、「真、善、美を調和し統一した主体」「完全なる知識と豊富なる情操と広範なる同情とがそれぞれ高度にしてしかも相互に調和した状態」、すなわち、真理的価値、道徳的価値、芸術的価値をバランスよく併せ持った「全人」であった。往々にして、学者や芸術家に自分勝手な人間や協調性を欠いた人間の存在が指摘されるが、これらは真理的価値や芸術的価値においては秀でているものの、道徳的価値を欠いているということになる。河合は単なる学者や芸術家ではなく、バランス感覚の取れた人間の形成を説いたのである。富や地位ではなく、その「人格」の向上というものに河合は人生の最高価値を認めたのである。……

内容説明

混迷の時代にこそ「教養」の復権を語ろう!本来、教養とはハビトゥス(身体化)されたものをいう。河合思想を通じてその新たな在り方を問う。

目次

第1部 その今日的意義(日本リベラリズムにおける河合栄治郎(武田清子)
今甦らせるべき自由主義の思想(粕谷一希)
理想主義者の「意志」(伊原吉之助)
河合教授と同時代の自由主義者たち(芳賀綏))
第2部 教養としての河合体験(企業人にとっての指針として(伊藤淳二)
鶴見祐輔と河合栄治郎(阪谷芳直)
河合先生と理想主義(松本久男)
教育現場に生きる河合栄治郎(西谷英昭)
ドイツにおける河合栄治郎(川西重忠))
第3部 「教養論」への新たなアプローチ(教養の復権と河合栄治郎(竹内洋)
河合栄治郎と学生叢書(渡辺かよ子)
河合栄治郎とT.H.グリーン解釈(行安茂)
河合栄治郎とバーナード・ボザンケ(芝田秀幹)
政治学者としての河合栄治郎(郭煥圭)
河合栄治郎と柏会(松井慎一郎))

著者等紹介

武田清子[タケダキヨコ]
国際基督教大学名誉教授

粕谷一希[カスヤカズキ]
『中央公論』編集長などを経て、現在評論家

伊原吉之助[イハラキチノスケ]
帝塚山大学名誉教授

芳賀綏[ハガヤスシ]
東京工業大学名誉教授

伊藤淳二[イトウジュンジ]
鐘紡株式会社名誉会長
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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