出版社内容情報
「韓国で前方後円墳を発見」というニュースが、我が国の考古学界に強烈な衝撃をあたえた。本書は、それを発表した姜教授の講演を中心に、松鶴洞一号墳と同規模の日本の前方後円墳についての報告14編などを収録。
刊行にあたって
……松鶴洞一号墳は、姜教授の指摘以降、日本でも従来軽く扱われていた小型の前方後円墳の検討の気運をうみ、それによって日韓にまたがる類似の墳丘の研究の足がかりがえられるようになったのは喜ばしい。だが一つの古墳についての問題提起にたいし、必要以上の批判がくりかえし加えられたのも事実であって、松鶴洞一号墳が市民権をうるための受難とはいえ私には理解できないことであった。
本書は、学問的なことに限らずそれから派生した学者のモラルについても、記録として将来にのこすべきものは大きく重複するもの以外はほとんど収録した。通読していただき、一つの物事の生まれるけわしい道のりが、東アジア的視野での古墳研究の一助になれば幸いである。
一九八四年九月八日 森 浩一
韓国の前方後円墳――松鶴洞一号墳問題について―― 目 次
第一部 韓国の前方後円墳について
姜仁求教授の講演に当って……森浩一
講演録・韓国の前方後円墳について……姜仁求(木下礼仁訳)
姜仁求教授の講演を聞いて……森浩一
第二部シンポジウム 松鶴洞一号墳と日本の前方後円墳
シンポジウムを始めるに当って……森浩一
奈良県下前方後円墳の確認と墳丘の認識の変遷……今尾文昭
前方後円墳の平面形態……田中英夫
葺石を有する前方後円墳……一瀬和夫
前方後円墳築造企画論からみた松鶴洞一号墳……宮川すすむ
松鶴洞一号墳実測図の型式学的検討……上田宏範
松鶴洞一号墳の測量図をみて……椚国男
配置関係からみた主墳と陪塚……石部正志
九州の六〇メートル級前方後円墳……鈴木重治
兵庫県の六〇メートル級前方後円墳……櫃本誠一・森岡秀人
和歌山県の六〇メートル級前方後円墳……大野嶺夫
松鶴洞一号墳と紀伊の前方後円墳……藤井保夫
京都府南部(山背)の六〇メートル級前方後円墳……辰巳和弘
大阪府の六〇メートル級前方後円墳……瀬川芳則・野島稔
奈良県の前方後円墳の規模……中井一夫
第三部 韓国の前方後円墳の真偽
――日本における論議について―― 姜仁求(統一日報社訳)
第四部 韓国の前方後円墳問題の進展 森浩一
韓国の前方後円墳(『京都新聞』)/姜論文についての編集者メモ(『古代学研究』)/韓国の前方後円墳(一)・(二)・(三)・(四)(『読売新聞』)/壁画騒動と現地説明会(『京都新聞』)/韓国の前方後円墳(『北日本新聞』外)/前方後円墳のある固城を訪ねる(『歴史と人物』)/韓国で発見された前方後円墳について(NHK放送)/韓国の前方後円墳研究の進展(『朝日新聞』)/学問のススメ方(『東京新聞』)/韓国の前方後円墳問題に関連して(『古代学研究』)/韓国の前方後円墳(『毎日新聞』)/続学問のススメ方(『神戸新聞』)
あとがき――『三田評論』を読んで――……森浩一
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