出版社内容情報
井上 正[イノウエ タダシ]
著・文・その他
内容説明
私たちは自分を超えた盲目的な力によって制約を課され、場合によっては生死の鍵すら握られていると感じることはないだろうか。アルベール=カミュはこのような不条理を直視し、明晰に理解しようと努めることをやめなかった。そしてこの苦行に耐えつつ生きる人間像をカミュが作品世界の中に自律させたとき、そこには愛のオーラが光を放っていた。不条理な宿命に反抗するというストイックな登場人物たちの沈黙の彼方には愛と幸福への希求が鉱脈のように存在している。本書では様々な相貌を呈するカミュの生涯と作品に切り込んでゆき、現代人としてカミュを読むことの意味とその魅力をさぐることにする。
目次
1 生い立ちの光と影
2 文化活動とジャーナリズム
3 たたかう市民から栄光の作家へ
4 “反抗的人間”と論争
5 悩めるカミュ
6 『転落』
7 『追放と王国』
著者等紹介
井上正[イノウエマサシ]
東京都生まれ。東京外国語大学外国語学部卒業。同大学院修士課程修了。青山学院大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Vakira
46
読友さんのカミュの「結婚」のレビューを読んだ。そういえば「結婚」は積読本となっていたのを思い出し引っ張り出す。カミュ26歳の頃のエッセイ。「結婚」の「砂漠」という章のラストに近いところで「いかにして愛と反抗の一致を確立したら良いのだろう?」との文章を見つけた。ムムム?勝手な僕の解釈だが愛とは自分の生命維持システムと考えている。そして反抗とは不条理に抗うこと。とすれば、もともと愛と反抗は一致するのではないかと思ってしまった。では、カミュは如何に自答したのか?急に「結婚」を読んでみたくなった。オ~なんか凄い。2024/06/05
ひつまぶし
2
不条理に向き合う者同士の連帯の可能性をカミュが示唆していたという話に興味を持って読んでみた。時代的背景をたどりながら、カミュの作品を通してその思想を読み解くという構成だと思うのだが、ある程度カミュの作品を読んでいる人でないとあまり理解できないかもしれない。またある程度ヨーロッパの思想やキリスト教的な文脈を理解できていないとカミュはよく分からないのではないかという感じがした。同時代的な議論について扱った本はないだろうか。とりあえず『シーシュポスの神話』『反抗的人間』『ペスト』辺りを読んでから考えようと思う。2024/12/17
la_mort_heureus
0
時系列で、カミュの生涯と作品を辿る。非常にわかりよく、今後繰り返し読むと思う。私は日頃、作品と作成者を切り離して考えがちなんだけど、カミュについては彼自身の理解を深めたかった。それに最適の本だった。2021/03/19
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