内容説明
菊池寛は、偉大なる作家であるよりも前に、まず、偉大なる生活者、偉大なる常識人であった。また、ざせつということを知らぬ偉大なる実行家であった。かれの心は、つねに現実に向かってさめていた。だから、文学や芸術に対しても、かれは、けっしてロマンチックな幻想を持たなかった。かれが、純文学の面での芸術的完成を、あえて深追いする必要を認めなかったのもそのためであった。こうして、かれの後半生のエネルギーの大半は、通俗小説や雑誌経営に費やされたが、その努力は、文学の社会化という、画期的な大事業と分かちがたく結びついていたのである。「人生第一、芸術第二」―このことばに、リアリスト菊池寛のすべては語り尽くされている。
目次
第1編 菊池寛の生涯(貧しい生い立ち;青春放浪時代;作家修業時代;新進作家からジャーナリストへ;文壇の大御所)
第2編 作品と解説(父帰る;無名作家の日記;忠直卿行状記;屋上の狂人;恩讐の彼方に ほか)
著者等紹介
福田清人[フクダキヨト]
1904(明治37)年長崎に生まれる。1927年東京帝国大学文学部国文科卒。立教大学教授をへて、実践女子大学教授、日本近代文学館常任理事を歴任。1995年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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rbyawa
2
j107、菊池寛の伝記としてはこれが今まで読んだ中で一番良いような気がする(『真珠夫人』を思い出の小説と語っていたので同時代の常識が残ってる世代っぽいね)。なにしろ「純文学による階級支配」が存在したという実際には存在してない歴史語りに巻き込まれることが多い人なので…、文藝春秋の伝記は対象に近いせいか少しバランス悪かったしね。学生時代に関してもわかる範囲で「小説との違い」が書かれていて推測が軽く添えられている程度、大御所となっていくのもわかる範囲でのみ触れている、現在の最新研究と合わせて読むのにも良さそう。2019/10/04