内容説明
明治という時代に、ほんのつかの間生きた一葉は、その證に永遠の女の生命を遺して逝った。家を背負い、貧しさにもだえ、現実に追いつめられ、打ちひしがれそうになりながら、自らの生命とひきかえに『たけくらべ』を書き『にごりえ』を書いて、一すじに自分の生き方をつらぬいた。現実の圧迫に必死に抵抗しつつ、かろうじてその自由な作家精神を守り通した一葉は、現実をつきつめることによって、独自の文学の世界を創り出したのである。多くの作家達が小説の世界で遊んでいたあの時代に、作家自身が真剣に人生に直面し、生きて、人生の真実に迫ることに小説を創る意味があることをはじめて證明し、実践してみせたのが一葉である。
目次
第1編 樋口一葉の生涯(生い立ち―父母と一葉の青春の日々;本郷菊坂町時代―初恋・小説家への道;龍泉寺町時代―塵の中;丸山福山町時代―栄光の座と死の病)
第2編 作品と解説(大つごもり;たけくらべ;にごりえ;十三夜;うらむらさき;一葉の世界)
著者等紹介
福田清人[フクダキヨト]
1904(明治37)年長崎に生まれる。1927年東京帝国大学文学部国文科卒。立教大学教授をへて、実践女子大学教授、日本近代文学館常任理事を歴任。1995年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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