内容説明
人生、ときとして、自分本来の居場所がどこなのかわからなくなることがあるものです。クリスマス休暇を前に、締めくくりをするこのベティのように。「それはまるで生活するのを忘れてしまったかのようだった」。エーリカという名前の大きなブタのぬいぐるみが、生きることにもう一度ある意味を与えてくれる―たとえそれが隠れた意味であっても―、その様子をエルケ・ハイデンライヒが、とても美しいこの物語の中で語ってくれます。そして、ミヒャエル・ゾーヴァほどにこのメランコリックでまた人の心を和らげるトーンを絵にできる画家はいないでしょう。彼が描くエーリカはこれほどすなおで個性的。すぐに好きにならずにはいられません。
著者等紹介
ハイデンライヒ,エルケ[ハイデンライヒ,エルケ][Heidenreich,Elke]
1943年生まれ。ベルリン、ハンブルク、ミュンヒェンの大学でドイツ文学、演劇学、宗教学、新聞学を学ぶ。作家、コラムニスト、司会者。自作やほかの作家の作品を朗読してCD録音も行っています。ケルン在住
ゾーヴァ,ミヒャエル[ゾーヴァ,ミヒャエル][Sowa,Michael]
1945年生まれ。ベルリンの造形芸術大学で芸術教育を専攻。半年間教育に携わったのち、画家、風刺漫画家、イラストレーターとして活動。ベルリン在住
三浦美紀子[ミウラミキコ]
1952年生まれ。立教大学大学院博士課程修了。日本大学・立教大学非常勤講師
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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日曜日のクマの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆのん
63
仕事に忙殺され疲れ切った女性。元カレからクリスマス・イブに遊びに来ないかと誘われる。24日のイブに彼へのプレゼントを買いにデパートへ。そこで出会ったのが大きなブタの縫いぐるみ、エーリカ。エーリカと共に彼の元へむかうが…。出会う見知らぬ人達を幸せな気分にするエーリカ。様々な問題に立ち向かわなければならない彼女もエーリカから前へ進むというプレゼントを貰ったのではないか。悲しくも優しいクリスマスの奇跡。3772019/12/11
キジネコ
50
年がら年中私は風呂でホワイトウリスマスを歌います。さぞ近所の皆様は、あほなおっさん、と嗤うておられるでしょうが まあったくおかまいなし…でクリスマスの本です。皆さま表紙の大きなピンクのカタマリを抱いて運ぶヒト、みえますか?ピンクのカタマリは豚さんのぬいぐるみです。ひそかに人格、いや豚格やね、を備えている気配のエーリカです。そして抱き抱えている方が物語の話者、主人公です。豚さんはドイツからイターリアまで旅をし乍ら儘ならぬ世界の住人たちにチョットした奇跡を起こすんです。エーリカに会った事があるか?ないか?➡2017/06/27
星落秋風五丈原
47
恋人にはなったけれど結婚はしなかった男性フランツから誘われたエリーザベトは、デバートに出かけて大きなブタのぬいぐるみに、どうしようもなく引きつけられてしまう。衝動買いしたブタにエーリカと名付けたエリーザベトは、ドイツのベルリンからイタリアのルガーノに旅をする。クリスマスの準備に忙しく、そして疲れてイライラしている道行く人も、ふわふわピンクのエーリカを見れば微笑まずにはいられない。2022/05/10
魚京童!
33
その年はずっと、狂ったみたいに働いた。そしてクリスマス直前には精神的に空っぽ、燃え尽き、回復できないと感じていた。お金はたくさん稼いだが、いやな年だった。まるで生活するのを忘れてしまったかのようだった。2017/10/01
mizuha
22
日々の生活に疲れてしまったヴェローニカが、クリスマスプレゼント用に思わず買ってしまった、ピンクのブタの特大ぬいぐるみ。エーリカと名付けた彼女との二人旅。ただ運ばれるだけで、人々を笑顔にしてしまうエーリカに導かれ、短い旅の間に息を吹き返すようなヴェローニカ。ピンクのブタは再出発する人へのプレゼントなのかもしれないと思えるほど、ゾーヴァの描くエーリカは、見ているだけで充分幸せになる。2014/12/09