内容説明
なぜ、命がけでドーバー海峡をわたるのか?戦乱のバグダッドを去った15歳のアブドゥルは、フランス、カレーの移民キャンプ「ジャングル」からイギリスへ向かおうとする。立ちはだかる高波と国境の壁。
著者等紹介
エリス,デボラ[エリス,デボラ][Ellis,Deborah]
カナダ、オンタリオ州生まれ。わかいころより、反戦、女性解放のための活動をつづけている。作家として、途上国で生きる子どもたちを主人公とした感動的な作品をつぎつぎと発表し、子どもたちが背負わされたさまざまな問題に、世界中の読者の関心をうながしている。カナダ総督文学賞、ルース・シュワルツ賞ほか、内外の多くの賞を受賞。戦乱のアフガニスタンを生きぬく少女を描いた三部作「生きのびるために」「さすらいの旅」「泥かべの町」(以上、さ・え・ら書房)は、17か国語の翻訳され、100万ドル以上の印税をストリート・チルドレンやアフガニスタンの女性のために活動するNGOに寄付している
もりうちすみこ[モリウチスミコ]
森内寿美子。福岡県生まれ。訳書『ホリス・ウッズの絵』(さ・え・ら書房)が産経児童出版文化賞に、訳書『真実の裏側』(めるくまーる)が同賞推薦図書に選ばれる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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扉のこちら側
84
2018年481冊め。主人公がイラク戦争開戦の2~3年後に母親を亡くしたと語っているので、作中時間は明確には記載されていないが2007年~2010年頃の話だろう。フランス・カレーで不法移民生活を送っていた三人の少年少女がボートピープルとなって英国を目指す航海の中で、イラク難民、脱走ロシア軍士官学校生、人身売買の被害者ロマというそれぞれの生い立ちが明かされる。10代半ばで国を捨てたり追われたりしたった一人で新天地を探す子どもたちはどれだけいるのだろう胸が痛くなる。2018/08/11
ケロリーヌ@ベルばら同盟
32
さまざまな困難の中で生きる子どもたちを描いた作品で世界の人々の関心を促し、反戦、女性たちの地位向上のための活動を続けているカナダ生まれの作家デボラ・エリス。この作品もユーラシア大陸の涯カレー、居場所も収入の道も奪われ、最後の夢を海峡の向こうのイギリスに託す人々が集う港から始まる。中心となるのは14歳前後の3人の少年少女。彼らは如何にして此処へ至ったのか、何を求めてイギリスに向かうのか、波のうねりのように現在と過去が交錯し、彼らを取り巻く凄惨な状況が浮き上がる。物語の基底に流れる音楽が美しく哀しく心を打つ。2018/09/02
けんとまん1007
8
ストーリーの構成は、たまにあるパターンで物語が並列的に進んでいく。少しずつ、謎解き(バックボーン)をするようで、なるほど・・そうだったのかと思う。過酷な状況の中でも、前に進む、希望というか夢というのか、すがるものへ進んでいく。ちょっと救われるような種も少し蒔かれていて、ちょっと気が楽にもなる。どこかで通じ合うものを持つと、人は強くなれるし、明日へ踏み出せる。人は捨てたものではない。2014/08/16
山のトンネル
7
クルド人のアブドゥル、ロシア人のチェスラブ、ロマ人のロザリア。それぞれ故郷を追われ、フランスに不法滞在していた3人は、イギリスへ向かう密航船に偶然乗り合わせた。人間不信に陥り、互いを信じることができない彼ら。しかし、生き延びるためにこの旅を成功させなければならない。2022/04/03
ぱせり
5
原題は“NO SAFE PLACE”邦題は「きみ、ひとりじゃない」皮肉なくらいに真逆の言葉なのに、読了したとき、この二つのタイトルが重なるのを感じます。その重なりが希望なのかもしれない、人間の厚みなのかもしれない、そんなことを思いました。2011/09/03