内容説明
この本は、ペーター・ヘルトリングが子どもにむけて書いた短編をのこらず集めたものです。家庭生活や、いろんな夢、家出少年のことや、毎日出会うできごとがテーマになっています。なかには、大戦前後の苦しかった時代の飢えのことや、むかしばなしと現実がいりまじって不思議な体験を読者にあたえる作品もあります。ヘルトリングと子どもたちとのユーモアたっぷりな日常生活の記録もそえられています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムーミン2号
6
ヘルトリングさんの短編集で、読んでいくと先の世界大戦やその後のベトナム戦争などで、子どもたちがどんな苦汁をなめていたかが描かれていることがわかる。いわば、子どもの立場からボクは、ワタシはこんなつらい思いをした、こんな風に感じた、考えた、が物語として昇華されているのだ。一方で、ヘルトリング家の4人の子どもの様子も描かれていて、年齢の違う子どもたちが、それぞれの立場でそれぞれの年齢に合った意見を言い合う様子が楽しいし、可笑しい。彼らによると、パパは朝は不機嫌で、朝食も一人別の場所でとるらしい。2020/05/04
Peanuts
3
ヘルトリングの「ニンジン」という話に、道徳の教科書で出会いました。価値観を揺さぶられる内容で、忘れられませんでした。他のお話も読んでみたい、と思い、この本を手にしました。「ニンジン」以外のお話でも、ヘルトリングはたくさん読者に問いかけているように思いました。私は、まだ答えを見つけられずにいます。でも、疑問を持つこと自体に意味を感じました。そして、ヘルトリング自身も、そうだったのでは、とも思いました。2016/05/04
菱沼
2
図書館リサイクル本。小説というよりエッセイのようだ。戦争中に子どもだった作者自身の体験に基づくものが多い。戦争で両親を亡くしてベトナムからドイツの家族に養子に迎えられた少年の物語「黄色い少年」は、同じ黄色の人種の者として複雑な思いで読んだ。ベトナム戦争の記憶もほとんどない幼児のうちにドイツに来て、ドイツ人の名前をもらい、ドイツ人として育った少年は、それでも黄色い少年として狩られ、攻められる夢を見る。減るとリングは一貫して「戦争はいけない」と伝えていると思った。2016/02/06