内容説明
ユネスコの「世界の記憶」にも登録された『御堂関白記』。最高権力者道長が記した日記の重要性は計り知れない。その道長が、娘(中宮彰子)のためにスカウトし、『源氏物語』を書かせた女性こそ、紫式部だった。『御堂関白記』全現代語訳を手がけた著者が読み解く王朝のリアル。
目次
第1章 脇役だった青年時代
第2章 後宮を制する者が権力を握る
第3章 彰子懐妊への祈り
第4章 栄華の始まり
第5章 三条天皇との確執
第6章 栄華の絶頂
第7章 浄土への希い
第8章 欠けゆく望月
補章 紫式部と『源氏物語』
著者等紹介
倉本一宏[クラモトカズヒロ]
1958年、三重県津市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程単位修得退学。博士(文学、東京大学)。現在、国際日本文化研究センター教授。専門は日本古代政治史、古記録学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
31
藤原道長の生涯を日記から解き明かす。時系列にまとめられているので、とても分かりやすかったです。天皇の外戚になり、地位を藩石にし、牽制をふるう野心家としての道長像が明確に描かれていました。摂関政治の頂点にまで上り詰め、権力を自らのものにしたとも言えますね。まさに権力を欲望のままに手にした人物なのですね。2025/03/15
鯖
22
道長の御堂関白記、行成の権記、実資の小右記の3つの日記を下に宮中政治を視る本。割とボッコボコに批判しまくるイメージの実資の小右記は生前から宮廷で広く読まれてたとか(…面の皮が厚いというか、みんな心が広いというか)、御堂関白記に刀伊の入寇についての記述はないとか、三条帝の東宮敦成親王の病状を実資が資平を使って探ると、その相手をしたのは「越後守為時の女」(=紫式部)だったとか、道長が死んだ日に行成がトイレに行こうとしてこけて死んだとか、知らんことばかりで面白かった。2023/10/03
サケ太
16
「この世をば……」。平安時代を代表する人物、藤原道長の言葉として聞いたことがあるこのフレーズ。藤原道長という男の生涯。彼の著した『御堂関白記』、側近行成の『権記』、実資による『小右記』を軸に、生まれ、成りあがっていく過程が描かれる。日記の重要性、紫式部の生涯、源氏物語の有用性、後援者についても記載されており、興味深い。絶頂を極めたイメージのある道長の心労さえも描かれており、彼の晩年は果たして幸福だったのかと想いを馳せてしまう。2023/10/27
MUNEKAZ
11
倉本先生の道長本。『御堂関白記』のほか、藤原実資の『小右記』や藤原行成の『権記』も参照することで、人間・藤原道長が立体的に浮かび上がる。いかにも権力者といった嫌なムーブも目立つが、同時に柔軟に朝議を司り、天皇の行き過ぎに物申せる人物として、実資ら批判的な公卿たちからも認められていたことが面白い。良いも悪いも含めて大物という感じ。増補された部分も興味深く、『源氏物語』執筆後の紫式部が実資と彰子を結ぶ取次役を行っていたとする。この辺は、今年の大河ドラマでも「秋山実資」と面白い絡みが見られるのかもしれない。2024/03/21
武井 康則
10
藤原道長の「御堂関白記」の読解を同時代の藤原実資「小右記」、藤原行成「権記」と合わせながら、道長を理解しようというもの。道長は創造性があるわけでなく、歴史の流れを変えることをしたわけでもなく、ただ貴族政治に順応でき、運が良くて子沢山だったということか。彼が摂関政治の頂点であり、言い換えるとその後、摂関家は衰え、武士の時代、家でなく、実力の時代に移行していく。それは何かというと悪霊が跋扈した時代でもある。紫式部についても一章を割いて果たした役割が書かれている。2024/08/16
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