内容説明
医者は、どう死ぬのか。どう親の死を看取るのか。医療嫌いを徹底した著者の父が、87歳で果たした超絶オモロイ幸福死。
目次
先手必敗の父
定年を指折り数えるぐうたら医者
糖尿病、検査しなけりゃ怖くない
足の指が腐って奇跡が
前立腺がんに思わず「しめた!」
死を受容してきらめく日常
しかし、思い通りにいかない人の死
回復して新たな試練が
認知症も怖くない
安らかな死にも多少の苦しみ
我が家は“病院死ゼロ”家族
平穏な死はむずかしくない
著者等紹介
久坂部羊[クサカベヨウ]
医師・作家。1955年、大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。2003年、小説『廃用身』でデビュー。14年『悪医』で第三回日本医療小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
111
『平穏死』『多幸的なボケ』・・どれも羨ましい言葉に久坂部作家とお父様。『孤独死』の良い所は生きてるうちは誰にも頼らず迷惑はかけない・・確かに(だから私は希望している)しかし・・現実は厳しいだろうと覚悟もしている。長寿を目指した日本医療機関と政府の『つけ』はこの先もドンドン増すだろう(汗)だからと言って、一派絡げて「○○歳以上に死を!」とは言えないよね(爆弾発言)でも私には、そうして!(本当にお願い)『死』だけは、形は別として誰にでも必ず来る事なのに・・語りだしたら止まらない本なのだった。2015/11/14
ゆいまある
109
私自身の父が癌でもういよいよである。医師でもある父は自分の死に方を早くから決めていたが、いざ死が近づくと死ぬのを怖がり、僅かに抗い始めた。覚悟が出来ていた筈の私も狼狽え、どう受け止めていいか分からず、参考になればと読み始めた。本当に楽で自然な死なんて過剰医療のこの世にはないなと思う。大事な人の死は何より寂しい。作者も明るく書いているが、結構苦労してるし、作者の母も妻も大変そう。心構えがあっても人それぞれということか。余り参考にならなかった。2023/05/08
AICHAN
72
図書館本。「最後までベストを尽くすとか、どこまでも諦めないというような文言は、世間ではウケがいいが、終末期医療では現実を知らない綺麗事で、死にゆく当人にとっては迷惑なだけである」「“小欲知足”(欲を抑えて足るを知る)の心構えがあればむやみに長生きを求めず、無理な治療もしなくなるだろう」…私の死生観とピタリと一致。私も周囲に迷惑をかけながらまでして長生きはしたくないし無理してまで長生きしようとはまったく思わない。死病に取り憑かれたら延命治療は望まない。そして、死んだら葬式無用、戒名不要、なのだ。2019/03/19
miww
61
医者だったお父様は医療拒否主義者だった。前立腺がんと診断、圧迫骨折、認知症と終末期が進む中、検査や治療、延命治療の全てを拒否する姿とその意思を尊重する久坂部さんの思いが切実に伝わってきた。お二人共医者なので医療行為の現実やその意味の記述が興味深く、延命について深く掘り下げられていて大変参考になった。「命を延ばしさえすればいいのであれば確かに医療は有効だろう、しかし延びる命の質は考えなくていいのか。辛く苦しい悲惨なだけの延命なら、ない方が安らかだろう」延命治療よりも本人の人格を尊重したいし、してほしい。2015/10/23
アキ
59
久坂部羊の父親は元麻酔科医だった。あまり医療を信じず検査・治療はなるべく受けず「前立腺癌ですか。ほう!それなら長生きせんですみますな」と治療拒否。さすが大阪人だけあって死ぬまでイチビリでギャグで笑かしてオモロイ話はたくさんあるが、死ぬ直前には生煮えやと言ってみたり、著者も親の介護で初めてわかったことも多かったって。父の少欲知足・莫妄想・無為自然の考えと、病院で死なないこと、こんな死に方が幸せだとおもえた。87歳で在宅で息子に最期を看取られて、「息子を医者にしてほんまによかった」っていい人生だったんですね。2019/05/06