内容説明
初めは夢だと思った―男が目覚めたのは、水面にたゆたう小舟のなか。古い装束をまとった船頭と二人きりの妖しい道行き。その過程で徐々に明かされていく衝撃の事実。人生を振り返るなかで、人はなにを取り戻したいと思うのか。なにが正しかったと言えるのか。いま、ふたたびまみえる「高瀬舟」の世界。
著者等紹介
神乃木俊[カミノキシュン]
宮崎県出身。宮崎大学医学部卒業。2020年、『門をくぐる』で幻冬舎ルネッサンス新社主催の企画出版コンテスト「命、つながり」で大賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タイ子
79
人は死後次の旅に出る。その先にあるのは天国か地獄か。誰しも天国を望み、先に逝った人たちに再会できるだろうと思っていやしないか。本作は死後の行先を決めるまでの一人の男が舟の中で人生を回想する物語。舟を操る船頭との会話、走馬灯のように現れるこれまでの人生。何も起こらない、ただ後悔の部分のみが思い出される。かつて医師だった男が後悔すること、母親への想い、家族に対して、たらればは当たり前の人生の中で男と船頭が見つめるもの。そして、遂に審判は下される。自分にとっての善悪が相手にとって同じではないことをしみじみ思う。2021/11/13
柊子
17
良い本だった。面白い…という感想ではなく、良い本を読ませてもらった、という思いだ。「高瀬舟」をモチーフに、一人の男の生涯が描かれている。関わった人たちの気持ちや真実が、とても重い。彼が自ら赤い門をくぐったとしても、きっと追い返されるだろう。「こっちではない」と。そうあって欲しいと願う。2021/09/05
シンミチ
1
後悔のない人生などない。人生はどうやっても儘ならず、無自覚に罪を犯していく。その罪で地獄へ行くことになるなら、この世の人達は皆天国になど行けはしないのではないだろうか。天国に行くために生きているわけでもないし、天国や地獄も信じてはいない。ただ、自分の手で幸せにできる範囲の人達が、自分がいることで"幸せ"だと少しでも感じてもらえる日々を送ろうとは思いました。 2022/03/03
おこげ
1
3☆どんな人でも、その一生を綴ると立派な本なるという。まさにそんな本。生前は血液内科医として、准教授まで勤め上げた主人公は、天国か地獄に向けて、三途の川を船で下る。テーマは好き。それぞれのエピソードも良かった。結末に不満もない。ただ、私的に全体的に足りない感じがした。感動しきれない、物語に入りきれない感があった。2021/10/26
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- 和書
- 九代目松本幸四郎