内容説明
高校生・二階堂京子の弟を襲った一つの事件。次第に明らかになっていく真実、壊れていく家族、そして孤独。家を出て障害者施設で働き始めた京子は、さまざまな出来事や人々との出会いを通して「正しさとは何か」を考え始める。最後に京子が導き出した「正解」とは?障害者と健常者、社会に存在する見えない壁に切り込んだ一冊。
著者等紹介
牛島薫子[ウシジマカオルコ]
1988年生まれ。北海道釧路市出身。大学院修了後、新聞記者として働くも精神疾患を患い退職。札幌市に移住して結婚。主夫となる。妻の勧めから小説を書き始める。『悪を与えよう』が処女作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sayuri
112
読みながら考え、考えながら読んでも一体何が正解なのか結論が出ない難しさを孕んでいてもどかしい。主人公・二階堂京子はダウン症候群の弟が笑われた事で同級生の紫音に異常とも思えるダメージを与える。そしてそれが悪だとは思わない。障害者は死んだ方が楽だと断言し殺人を犯す者もいる。私にはそちらの方が健常者であるとは到底思えない。障害者と健常者、正しさと悪、両者には大きな壁があるようで薄皮一枚程度の厚みしかない。誰もが病気や事故でいつ障害を持つ事になるかも分からない。自分の事として捉え想像力を鍛える事の重要性を感じた。2020/06/03
akiᵕ̈
34
健常者と障害者。そこに“必要な配慮”として分かてられたことによっておこる差別。健常者だからといって、異常で歪んだ常識人はいる。ダウン症候群の弟を持つ京子は、その弟を笑われた事と事件に巻き込まれてしまった事で、自分を正として身近な人を憎み貶めたりするけど、それは本当に正なのか?またある人は、障害者の人たちを間違った正義で排除しようとする。健常者だからといって、その紙一重の狂気に恐ろしさを感じずにはいられなかった。2020/07/01
すけまる
23
いや、、これは深い。深く考えさせられる。現在私の身近な周囲に障がい者はおらず、私としては障がい者を感動のネタにする所謂感動ポルノには否定的立場。障がい者にも例えば性欲はある、など色んな人がいるという認識は少なくとも持っているつもりではある。がしかし、この本を読んで頭で分かってても本当に自分は何も気にせずに障がい者や、そのご家族と接せられるかといったら自信がない、と思った。やはりなんらかの気は使ってしまうと思う。でも気を使うことだって普通のことなんだから、普通に接してるとも言えるし…なんてぐるぐる巡る2020/09/17
もぐたん
20
健常者も狂気を孕んでいる。精神に目を向けると何が「普通」で、どこまでが「正常」なのかわからなくなる。ユニバーサルデザインが当たり前になってきた今、精神障害者にとって何か変わってきただろうか。相変わらず生き辛く、また、その家族も、大変な苦労をしているのではないだろうか。健常者でも、障害者でも、どちらも被害者にも加害者にもならない社会になるよう願って本を閉じた。★★★☆☆2020/04/14
けんたん
5
健常者と障害者。障害者の弟をもつ姉の京子。彼女の思考が様々な人々に影響を与え、またそんな彼女も与えられる。それがこの物語のいう【悪】なのか。亜は次という意味があり、その下に心がついて、悪。悪は次のことを考えるチカラなのか。2020/04/19
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