出版社内容情報
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内容説明
高熱で病院に運ばれた二歳九カ月の男児が懸命の救急治療も及ばず亡くなった。悲嘆に暮れる両親は医療過誤だと病院を提訴。そこで病院から弁護の依頼を受けたのが、この手の裁判に勝ち続けてきた雨守誠だった。救えなかったら医師が悪いのか。法律は悲しみを癒す道具じゃない―信念に基づいて、雨守は医療現場の矛盾や不条理に切り込んでいく。
著者等紹介
真山仁[マヤマジン]
1962年、大阪府生まれ。同志社大学法学部卒。新聞記者、フリーライターを経て、2004年、企業買収を巡る熱き人間ドラマ『ハゲタカ』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
103
医療過誤とそれを取り巻く弁護士と当事者達を描く。なお、僕が勝手に期待していた医療若しくはリーガル強寄りの作品ではなく、様々なこれらの登場人物達の心理描写を重視しているのではないか。特にその中で亡くなった子の父親の行動や葛藤は身に沁みた。そのような基調があり、様々な学びももあり、読めてしまうのであるが、一方で味付けが薄いというか半のめり的な感も最後迄拭えなかった。何故かを読了間近から考えていたのだが、それは登場人物達、特に両親とその血縁者達が皆身近でないというか一般的な職業ではないからではないだろうか。2024/08/09
KAZOO
94
これは真山さんの作品の中でも若干異なる気がしました。医療過誤をめぐる法廷闘争的な意味合いが強いと感じられるのですが、いつもよりも登場人物たちの関係が楽しめました。主人公の法律事務所の人物、す主人公の元の法律事務所の人物、新聞記者、医療法人、医療過誤に会った家族たちの状況がかなり語られています。表題の題名がポイントともなっているのでしょう。2024/05/24
タルシル📖ヨムノスキー
27
昔に比べて医療訴訟が増えたのは、患者家族の意識が高くなったからというより、弁護士の数が増えすぎたのが原因の一つと言えるかもしれない。だから訴訟を恐れて医師を志す人も減るし、たとえ医者になったとしても命と直接向き合うことが少ない診療科に集中してしまったりするとか。高熱を出して夜間救急を受診した幼児が亡くなり、両親が医療訴訟を起こすという物語。もちろん一番の読みどころは法廷でのやり取りですが、物語のキーパーソンの一人、日向律子弁護士には腹立たしさを覚えます。テーマは「病院経営に、経済的合理性はなじむのか?」。2023/10/28
Y.yamabuki
24
医療ミスで訴えられた病院側の視点で描かれた作品。当初から悪意がはっきりしていため、想像していた様なハラハラ、ドキドキの法廷劇ではなかったが、遺族が訴訟を起こす心情と過程がわかり興味深かった。 2023/11/14
こばゆみ
14
面白かった!深夜に高熱を出し息を引き取った2歳児への医療行為は適切であったかを巡る裁判のお話。読者は病院側を応援したくなる描写が多く、その通りの結末へ向かっていくので妙な爽快感があった。そして患者が症状を訴えることのできない小児医療の難しさを感じた。2023/11/09