出版社内容情報
内容説明
一九四五年八月、ソ連軍の侵攻から逃れるため、満洲から多くの日本人が北朝鮮に避難した。飢え、寒さ、伝染病。本土終戦の日から始まった地獄の難民生活で、人々は次々と命を落とす。国はなぜ彼らを棄てたのか。世界史の中でも稀に見る悲惨な難民だった彼らの存在は、なぜ黙殺されたのか?「戦後史の闇」に光を当てた本格ノンフィクション。
目次
第1章 ソ連参戦―一九四五・八・九、新京
第2章 一〇九四名の疎開隊―北朝鮮・郭山
第3章 足りない食糧
第4章 飢餓の冬
第5章 死にゆく子どもたち
第6章 旧満洲への帰還
第7章 残された人々―一九四六・春、郭山
第8章 三八度線を目指して―決死の脱出行
第9章 国共内戦の荒波―一九四六、長春
第10章 最後の脱出行―一九四六・九
終章 日本人難民―戦後史の闇
著者等紹介
井上卓弥[イノウエタクヤ]
1965年、山形県生まれ。慶應義塾大学卒。毎日新聞社で外信部や社会部、サンデー毎日編集部の記者やローマ特派員、学芸部編集委員を務め、コソボ、パレスチナ紛争などを取材。イラク戦争で米海軍に従軍した。現在、公益財団法人「安達峰一郎記念財団」理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
26
凄惨とも言える状態が展開されています。有事に棄民をする国家は唾棄すべき存在であると感じます。この件に関しては現在に至るまで、政府、軍隊、マスコミという時代をリードしてきた人たちの行動には保身と自己の欲求しかないのかとも思いました。淡々とした書き方故により心に響きました。2024/09/21
かめりあうさぎ
25
終戦直後、満州にいた民間人は文字通り国に見捨てられ難民となった。どうして自国の重大な歴史を私は知らないのだろう。シベリア抑留のことも杉原千畝氏のことも本で知ってきたのに、どうしてこのことはここまで知らずに来てしまったんだろう。我先にと逃げ出した関東軍も唾棄すべき存在だけど、難民になった民間人に対してどこまでも傍観者だった日本政府も許せない。自分たちが守るんだという気概が一切ない。脱出道中で命を落とした多くの人々の遺体を回収する気配はいまだになく、当事者の死をもって風化するのを待っているかのよう。2021/05/25
ぱむりん
2
重たい話だった。 けれど、忘れてはいけない戦争のこと。 2024/04/15
ひゃく
0
4/8~ 藤原てい著『流れる星は生きている』と比較してしまって、いまいちのめり込んで読めなかった。 物語要素が少なく事実の羅列が多かったのも一因だと思う。 とはいえ凄惨な難民生活であったことに変わりなく、終戦関連の書籍を読むたびにソ連の参戦を腹立たしく思ってしまう。 そもそも不可侵条約を破棄できるっていうのは、条約の意味を成してるのかな。 戦争だから仕方がないかも知れないけれど、それを見越しての不可侵条約だという気もするし。 破棄した側にペナルティが課されない限り、条約(契約)の意味がないように思う。2021/05/03
kzm
0
大変悲惨な記録。また、悲惨な状況下でしっかりと記録をとっていた当事者に感服する。2021/04/17