内容説明
学校から帰宅し、母親に捨てられたと知った小学生の純矢。母の親戚・歌子の家に預けられたがそこはデブ女、無職の中年、67歳の引きこもりや毒親の老婆など、純矢が「生きてる価値ない」と思う大人の吹き溜まりだった。捨て子の自分も同類だと不貞腐れていたある日、「歌子が双子の姉を殺した」と聞き探り始めるが。大人になれない大人たちの感動ミステリ。
著者等紹介
まさきとしか[マサキトシカ]
1965年東京都生まれ。北海道札幌育ち。2007年「散る咲く巡る」で第四十一回北海道新聞文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さっこ
69
父親を知らず母子家庭で育った純矢・小学5年生。ある日、母親から捨てられた。親戚の歌子のところに引き取られるのだけれど、そこには無職の中年と67歳の引きこもりが居候していた。吹き溜まりのように思えたそこで、人とのつながりや、自分の居場所を見つけ出していく。それぞれが小さい頃想像していた未来と現実にもがいている。だれもが大人になれない。最後は温かく終われた。2020/10/19
練りようかん
12
小五男子が暮らすことになったのは居候ハウスと呼びたい、行き場のない人を受け入れる家。しかし家主の母子は世話をせず個性強め。全体的に訳アリ感満載で面白そうと興味を引かれた。主人公の口癖は生きてる価値あるんですか。それに対し居候達が答えを見い出す再生ストーリーなのかなと思う一方で、二人でいたくないから他人を住まわすのかなと崩壊ストーリーも想像、家に集まるユニークな面々のとぼけた感じと深い業の調和が良かった。例の口癖が矢印を変えて刺さる場面は胸をつく。大人になった子ども、と感じる人もいるよなと思うラストだった。2024/09/12
忍者千乗りの門戸開放
11
初まさきとしか作品。 読みやすい文体でサクサク読めました。 人の心の機微、関係性、子供から大人への階段… 最後はもっと劇的でお涙頂戴的なものかと思ったが、そうでもなかった。 けれどもなかなか考えさせられました。 人が生きている意味や価値… うーん…軽い小説だけどテーマは重い。 ありがとうございました!2020/09/15
かすみ
9
老年と中年の親子が住む家に、何の関係のない居候たちが繰り広げる生活の物語です。解説にもありましたが、話の余白が多いため、想像力が必要かもしれません。2025/02/26
うめ
7
まさきとしかさん3冊目。本作はミステリ要素かなり薄め。だから裏表紙のあらすじはいただけない。「歌子が双子の姉を殺した」なんて第四章でやっと出てくる要素を、さも壮大なミステリかのように"あらすじ"として書かないでほしい。/純矢の生育環境はとっても痛ましいはずなのに、不思議とその毒々しさに胸が抉られる感覚はない。彼のもがく姿はむしろどこか愛らしくて微笑ましい。架空貯金なんて側から見れば一銭にもならないただのおトク記録だし、何かにつけ投げつけまくる「生きてる価値ない」って台詞は結局自分に跳ね返ってきてしまうし。2023/07/25