内容説明
警察官の姉が東シナ海の訓練で行方不明となって五年、防衛上の機密を理由に当局が真相を明らかにしないなか、新聞記者の山本秋奈はキャリア官僚の堀口とともに謎を追う。折しも沖縄ではオスプレイの墜落、県警本部長狙撃など事件が続発。一見無関係なこれらは、ある重大な国際問題と繋がっていた。圧倒的リアリティで日本の今を描く情報小説。
著者等紹介
青木俊[アオキシュン]
1958年生まれ。横浜市出身。上智大学卒業後、82年テレビ東京入社。報道局、香港支局長、北京支局長などを経て、2013年独立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobby
129
ここにまた未知の歴史と現実がある。もちろんフィクションと知って読んだが、実際に起きていても少しもおかしくない事態は一気読み必至!大学時代に国際政治をかじり、尖閣諸島をめぐる日中情勢にも少なからず持論ありの身として、すっかりのめり込んでしまった。何より壮大なテーマを身近な事柄に置き換えて分かりやすく読ませるのが素晴らしい。沖縄を舞台に中国・アメリカを巻き込み息をつかせぬ展開の一方で、徐々に明らかになる要因が古文書への浪漫として描かれるのも斬新。利権への羨望や執着から人民の血が流される様には憤り感じるばかり…2019/09/05
セロリ
36
警察官の春奈は魚釣島の作戦に参加し爆死した。その妹の秋奈は、姉の婚約者で警察官僚の堀口とともに姉の死の真相を突き止めようとこの5年間、必死に探っている。沖縄では、米軍人たちによる女子高生の強姦殺害事件が起き、県民の不満が充満する中、オスプレイの墜落、県警本部長の殺害、さらには沖縄米軍基地内で司令官が殺害される。消えた『冊封使録・羅漢』はどこに?意欲作だとは思うが、サスペンスでもミステリーでもなく、現実感も乏しくて、感動とか恐怖とか心を震わせるような作品ではなかった。ただ結末は、予想外でした。2023/06/27
カープ坊や
27
2016年my ベスト本「尖閣ゲーム」を文庫化にあたり大幅に加筆修正された本書。 はやくも2019年myベスト本必至の予感!!! 政権に忖度してオスプレイの『墜落』を『不時着』と報じるNHK。 沖縄の民意をことごとくはねつける日本政府。 情報公開しても黒塗りの文書しか公開しない日本政府。 ここ数年の政府とマスコミの対応などが加筆されたもよう! ラストでの本書に登場する総理大臣の英断にはアッパレ! 沖縄を未だに日本の植民地扱いしているアベ晋三に本書の総理大臣の爪の垢を煎じて飲ましてやりたい。2019/01/06
鍵ちゃん
19
警察官の姉が東シナ海の訓練で行方不明となって5年、防衛上の機密を理由に当局が真相を明らかにしないなか、新聞記者の山本秋奈はキャリア官僚の堀口とともに謎を追う。折しも沖縄ではオスプレイの墜落、県警本部長襲撃など事件が続発。一見無関係なこれらは、ある重大な国際問題と繫がっていた。圧倒的なリアリティで日本の今を描く情報小説。結構、ストーリーに迫力があり面白かったが、実際に起こったら恐ろしい事件になるだろう。2021/01/09
Katsuto Yoshinaga
17
沖縄の女性新聞記者が、若手警察官僚とともに、魚釣島の訓練で行方不明となった警察官の姉の謎を追う。オスプレイの墜落事故、県警本部長の狙撃といった事件の陰に、琉球王国時代の謎の古文書。キャラクター、アウトライン、モチーフと私の好みではないのに、これが面白かった。女性記者と官僚に、謎めいた強面自衛隊司令官、艶っぽい謎の沖縄女性、軽佻な県知事が絡み、アクションシーンはラノベ風ながら、妙にリアルに感じさせる。本作と「潔白」の2作しか発表されていないが、もう少し注目されても良いのではないか。面白い、巧い作家である。2020/11/14