内容説明
彼女との関係をあと一歩進められない会社員、ホームヘルパーの仕事に行き詰まる主婦、娘を亡くしてしまった夫婦、中学受験に失敗した優等生、家族との確執により結婚に踏み切れない女性…。きっかけはほんの些細でも、誰かが誰かを想った行動が、立ち止まっていた背中を優しく押して―。思いもよらない幸せのリンクに心が震える傑作長編小説。
著者等紹介
中條てい[チュウジョウテイ]
1956年生まれ。南山大学文学部仏語学仏文学科卒業。2012年、斎藤緑雨文化賞長編小説賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
151
★★★★★ 初読み作家さん。これ面白かったー。①通勤電車って習慣で乗る車両や時間が同じになり、いつも見かけるお馴染みさん的な人って出来ませんか?話したこともないのにね。②ホームヘルパーさんと90歳のピアノ弾きおばあ様のちょっと奥が深い話です。感動!③事故で他界された娘さんの生前のことと両親の思いなどが心をつかみます。④受験する子と親の気持ちがすご〜くリアル。途中登場のおばさんがまたいい味出してます。⑤離婚後の人間関係話なんですが、他の離婚テーマものとは違う着目点で興味のある作品になってます。オススメ!2016/09/04
みかん🍊
95
5つの短編が実は繋がっている好きなタイプの構成、同じ電車でいつも会う人が乗り過ごしそうになったのを思わず助けてしまった、ヘルパーの仕事先の90代の女性がピアノを弾ける事を知りついおせっかいをしてしまう、一人娘を事故で亡くしてしまった夫婦の所に届いた手紙、中学受験に失敗した少年、両親の離婚により実家を出なくてならなかった女性、ほんの些細な親切やきっかけ、見返りやお礼を期待していない行動が他人の人生に影響を及ぼし廻り回って自分に返って来る事もある、相身互い、素敵な言葉です。2024/11/19
ぶち
87
映画がとても良かったので、原作も読んでみたくなりました。各短編に主人公がそれぞれいて、その主人公の周辺にいた人が別の短編の主人公になっていたり、脇役になって登場してきたりします。そんな人と人との繋がりが丁寧に描かれています。「相見互い」というのは、「知らないだけで、いろんな助け合いや思いが巡って、きっと自分のところにも届いている」… ちょっとしたことが誰かを助けていたり、慰めになっていたり、元気づけていたりする、そんな繋がりがハートフルに描かれたドラマに号泣する場面が多いのは映画も原作もおなじです。2024/12/24
nico🐬波待ち中
69
何度も泣かされた短編集。各短編の隠された繋がりを見つけて温かい気持ちになる。様々な理由で一歩を踏み出せず立ち止まる主人公達。周りの人達との繋がりや奇跡により最後はみんなが笑顔になる!アイミタガイ…初めて知ったこの言葉は日本らしい素敵な意味を持ち、物語を明るく照らす。特に「幸福の実」の90歳のピアニストこみちさん!品があってしゃんとしていて、でもお茶目な面もある素敵な女性!こみちさんの物語が一番泣けた。幸せは日々の果実…日々の苦労や努力が養分となり、こぼした涙で実は熟す。背中を優しく押してくれる物語だった。2016/10/27
chimako
66
どの短編もグッと来るところがあり、目を手術したばかりなのに泣けてしまった。緩くリンクした物語をまるで親戚のオバチャンが俯瞰するように「ああ、あの子が偶然助けたのは彼女のお母さんか……」といちいち感心しながら読み終えた。叶海の話は同じ親として切なくやりきれない。映画は梓と叶海の中学生時代も描かれているようだ。どんなお話に仕上がっているのか、観てみたい。乗り越しそうになった叶海の父にスマホを落として合図を送った澄斗は本当にグッジョブ。また同じ車両に乗れば良いのに。時間の有り余る午後、良い本を読みました。2025/01/17