内容説明
井の頭公園の奥深く潜む、夜にしか開かない図書館。生い立ちに消えない痛みを刻むオリエ。過去に妹を傷つけたことを悔やみ続ける兄・スグルと、彼を救済したい妹・マナミ。前世の記憶をもてあますキリコ。“永遠なる”ドラゴンに導かれるように集う彼らは、痛みとともに、それぞれの“性”と“禁忌”を解き放ってゆく。ミステリアスな官能長篇。
著者等紹介
村山由佳[ムラヤマユカ]
1964年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。93年「天使の卵 エンジェル・エッグ」で第六回小説すばる新人賞を受賞。2003年『星々の舟』で第一二九回直木賞、09年『ダブル・ファンタジー』で第二二回柴田錬三郎賞、第一六回島清恋愛文学賞、第四回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
71
官能小説とのことですが、どちらかといえばファンタジーと言った方がいいですね。夜毎に開く図書館に導かれる痛みを抱えたオリエ、スグル、マナミ、キリコ。永遠のドラゴンが彼らを癒していくように思えました。龍の不思議な力が満ちているような作品だと思います。2019/01/16
りゅう☆
65
幻想、夢、記憶、前世、運命、輪廻転生、禁忌、龍。昼は辿り着けず夜だけ開いてる図書館の司書として働きだしたオリエ。まずその設定から非現実であるが、現実の中のファンタジーな世界へと引き込まれていく。旦那からの離婚に応じかねているオリエだが、ある儀式により離婚を決意。龍神沼で幼き兄妹に起こった出来事をずっと引きずってる兄スグル。生涯処女である巫女として貫かなければならないのに兄を愛したマナミ。伏線的な要素あり回収されたようでもあるが、官能的表現を含め、最初から最後まで掴み処のない夢を見ているような感じだった。2015/10/13
M
64
森の奥に佇む、夜にだけ存在する図書館。重厚でレトロな館内の燻されたような乾いたムードに魅入られた。内容は帯にある官能だとかよりも、大方ファンタジー小説。ファンタジーが不得手で、行きつ戻りつしてもついてゆけずじまい。ひとつだけ、私も有無を言わさず龍に襲われたいとは思った。襲うという字…龍の衣だわね。2019/05/19
じょんじょん
57
村山由佳さん こんな作品書かれるんですね。青春小説といい官能小説といい、多才な作家さんだけど、それぞれの作品が村山由佳さんの内面の表現なんだろうと思いました。『君の名は。』を彷彿させる龍神伝説、三島由紀夫『豊穣の海』を彷彿とさせる輪廻転生論など、人間の歴史の根源に関わる要素が満載だと思います。「時間は過去から未来に流れるのではなく、未来から過去に流れるという考えもある」心に響く言葉がちりばめられた、素晴らしいスピリチュアルストーリー。「ミステリアスな官能長編」という裏表紙コメントははずしてもらいたいです。2018/01/24
まさきち
52
非常に読みやすい文体とするすると流れる展開で一気読み。ただし内容的には竜(ドラゴン)をキーワードに性愛と禁忌を絡めた村山さんらしいファンタジー(A)なんですが、少々結末に納得がいかないというか、言わんとするところがつかめない感じで少々不完全燃焼な印象でした。2015/02/03