出版社内容情報
「なぜこの病院の救命率が100%かわかりますか? それは助かる金持ちだけ診て、あとはよその病院へ回すからですよ」──。 医学には絶望しているが驚くべき能力を持った町の小さな開業医と、医療崩壊を尻目に急成長する金持ち相手のメディカルセンターの天才外科医の、壮絶な一騎打ち! 惨殺犯を追いつめるのは、どちらの医者か?
内容説明
神戸の住宅地での一家四人殺害事件。惨たらしい現場から犯人の人格障害の疑いは濃厚だった。凶器のハンマー、Sサイズの帽子、LLの靴跡他、遺留品は多かったが、警察は犯人像を絞れない。八カ月後、精神障害児童施設の十四歳の少女が自分が犯人だと告白した、が…。外見だけで症状が完璧にわかる驚異の医師・為頼が連続殺人鬼を追いつめる。
著者等紹介
久坂部羊[クサカベヨウ]
大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。作家・医師。2003年、小説『廃用身』(幻冬舎文庫)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょこまーぶる
301
著者が医師だからこそ書ける内容で非常に興味深く読むことができた一冊でした。刑法39条というテーマの小説は様々あると思うけど、実際に係わっている人の苦悩からの視点でその問題性がわかり易かったように思いました。為頼医師の外見だけで症状を見分けてしまうという力は、検査や薬偏重の医療の世界には大切な能力だと思うし、能力がないにしても忘れてはいけない視点のように思えますね。医療ミステリーって面白いな。2012/10/07
青乃108号
298
刑法39条。精神に異常をきたした状態でなされた犯罪においては犯人は罪に問われない。この法律が如何に問題であるのかを指摘するべく書かれた小説。【悪医】に心酔しこの作家を追いかけているのだけれど、良いとは思えなかった。痛みを感じる事が出来ない【無痛】のイバラが行う解剖の場面の克明な描写は、こちらに不快な思いをさせるだけであり全く不要である。その他の設定、ストーリー、人物、全てにおいてやはり無駄が多く、折角のテーマが全然浮かび上がって来ない。読後の印象は殺人モンスターのホラー小説にとどまってしまっている。2022/09/28
そる
293
再読。刑法第39条題材の本は興味があってよく読みます。これは精神疾患や心神耗弱がある加害者側、それに巻き込まれた被害者側、どちらの視点も肯定的で考え深い。どういう解決が理想なのかその事件1つ1つによって変わるのかもしれない。登場人物がみんな不快で嫌悪感。菜見子の人は人の働きかけで治るという意識がまず嫌い。佐田の人のせいで人生が悪くなった、ってのも虫唾が走る。皆あまりいいように描かれてないのは作者の狙いなのか。「(略)でも、病気は自然現象なのです。だから手強い。一生懸命やれば必ず解決する訳でもない。(略)」2020/05/05
そる
285
読メ登録以前に読んでいて、何の記録も残していません。再読して感想書きます。→ 2020年5月再読して感想書きました。そちらを読んでください!2016/09/01
抹茶モナカ
260
刑法39条に対して、問題提起したミステリー。描写が醜悪で、統合失調症についても偏見を呼びそう。陽性症状の事ばかり書くし。まあ、僕が統合失調症なので、引っかかったのかもしれませんが。読むのを途中で止そうかな、と、思った。伏線を回収して行く、というより、人間関係が繋がり過ぎて、狭いムラ社会みたい。ちょっと、個人的にはオススメ出来ない本。2015/10/03
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- 和書
- 侍従長の回想 中公文庫