内容説明
九州の水郷都市・箭納倉。ここで三件の失踪事件が相次いだ。消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女だったが、不思議なことに、じきにひょっこり戻ってきたのだ、記憶を喪失したまま。まさか宇宙人による誘拐か、新興宗教による洗脳か、それとも?事件に興味を持った元大学教授・協一郎らは“人間もどき”の存在に気づく…。
著者等紹介
恩田陸[オンダリク]
1964年宮城県生まれ。92年、『六番目の小夜子』でデビュー
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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さてさて
333
自分はマジョリティに属していると思っていたのに気づいた時にはマイノリティの側に追いやられてしまう恐怖感。誰がどちらに属し、誰が自分の側から離れて反対の側にいってしまうのか。いつの世にもマイノリティがマイノリティでいるには強い意志が必要です。そういった葛藤が、恩田さんらしい登場人物の心の内や緻密な情景描写と共に読み手に迫ってくるこの作品。マジョリティに染まることへの戦いは一旦染まってしまうと逆に今までの葛藤に疑問がわきます。何とも言えない、爽やかささえ感じる寂寥感の漂う結末を見る思った以上に深い作品でした。2022/02/01
ダイ@2019.11.2~一時休止
150
ホラー?小説。読み終わっても結局なんだったのかがよくわからない・・・。恩田さんだからこんな後味かな?。2016/10/15
jam
143
再読。恩田は境界を書く作家である。境界とは世界を分かつもの。そちらに足を踏み入れたら二度とこちらに戻れない。だから伝承においては、神隠しから戻った者は忌むべき者となる。彼の岸から此の岸は見えても、此の岸から彼岸は見えない。そして、実は境界は、あらゆる関係性にも存在する。無論、愛と憎しみにも。作品は、無条件に信じる世界が足元から崩れるような不安をもたらす。それは境界の比喩的象徴として描かれるが、不安に爪を立てながらも、やすやすと境界を超え連綿と生きる人をも描く。もしかしたらそれが永遠というものかもしれない。2016/12/18
SJW
138
九州の水郷都市・箭納倉(柳川がモデル)で失踪事件が相次ぐが、その内に記憶を喪失したまま戻ってくる。元大学教授・協一郎は教え子の多聞と娘の藍子を巻き込んで不思議な事件に向かうという長編SFホラー。恩田さんお得意の地方の閉じられた街での話。初めは学生の頃に柳川を訪れて堀を舟で楽しんだことを思い出したが、話が進むにつれて街が盗まれてしまうと楽しかった思い出が吹き飛んでしまった。2020/07/07
エドワード
135
九州の水の都・箭納倉に降り立った、四人の男女。彼らが目にする、失踪する老人たち。失踪した老人は突然戻るが、微かに元の人間と異なる…。そして突如、箭納倉の町から4人以外の全員が消えた…。映画「うる星やつら2/ビューティフル・ドリーマー」に出て来る言葉「浦島太郎だけじゃなく、村人全員が亀に乗り、竜宮へ行って帰って来たとしたら、どうなっていたでしょうね。」が頭に浮かぶ!この、最近めっきり少なくなった、ゾクゾクするSF感、恩田陸さんのノスタルジック満載の面白さ。夢は見るもの、楽しむもの。眩暈をこそ楽しもうぞ。2018/12/12
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