内容説明
視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった―。書き下ろし小説。
著者等紹介
乙一[オツイチ]
1978年福岡県生まれ。一七歳の時「夏と花火と私の死体」で第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞し、衝撃のデビュー。日本ホラー小説界の将来を担う書き手として、注目を集めている
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サム・ミイラ
880
これほど泣きながら読んだ小説は初めてです。先方の不注意による交通事故で視力が失われていく怖さと悲しさ。親一人子一人寄り添い生きてきた優しかった父親との死別。一人で生きる決心をした彼女の気持ちを思うと胸が締め付けられるほど感情移入してしまいます。殺人の容疑者の男性との奇妙な共同生活が軸ですが孤独な二人の心の交流が温かく読む者をも癒していきます。なにより文章が良い。素晴らしい。この二人に幸せが訪れる事を心から願い実に結末が気になる物語でした。未読の方は是非読んでほしい作品です。2015/06/01
青乃108号
612
良い本を読んだ。心が暖かくなった。涙が出てきた。アキヒロは俺に似ていて、似すぎていて、あまりにそっくりだったから。ミチルとアキヒロ。2人のこれから。きっとうまく行く気がするよ。この世界はそんなに悪くないもの。2022/04/05
yoshida
591
中田永一氏名義の作品は読んでましたが、乙一氏名義作品は初読み。他人と近付きたいが傷つくのを恐れて、あえて孤独を選ぶアキヒロ。視力を殆ど失い、また、父の死により孤独となり、一人で外に出るのを恐れるミチル。アキヒロは職場で孤立する。孤立の遠因でもある同僚の松永が死亡し殺人の疑いがアキヒロにかかる。アキヒロは現場の駅を確認できるミチルの家に静かに入り込み、自分の見た真犯人を探す。寂しい二人の奇妙で静かな生活が始まる。劇的に事件は解決する。アキヒロとミチルが成長し、新たな一歩を踏み出す。見事な構成。読後感暖か。2015/12/23
hit4papa
525
視力を失った女性と、その家に逃げ込んだ殺人事件の容疑者が演じる無言劇です。孤独な二人が同じ空間を共有しながら、心を通わせていく様が感動をよびます。意外な真実で幕を閉じますが、語り合うべきことがたくさある二人のこれからを思うと、とても晴れやかな気分になります。白乙一派には感涙ものの逸品です。2016/08/10
射手座の天使あきちゃん
518
視力を失い一人静かに暮らすミチル、世間の人間関係に馴染めず淋しく生きるアキヒロ 駅で起こった殺人事件が二人の運命の糸を結び付けてしまう。 言葉を交わさず、心を通わせて行く二人の心情が丁寧に描かれていて心に沁みてきます。 おぉ、最後にそんな展開までも! Bオフ 105円本にしては大満足の一冊でした、乙一さん印税払わずにゴメンナサイ <(^_^;2013/06/23