出版社内容情報
詩帆17歳の誕生日デートは岡山の「大原美術館」、ピカソ〈鳥籠〉のまえ。それからふたりはいつも一緒だった。けれど、彼は今日旅立つ。
(「窓辺の小鳥たち」)
ある少女に導かれるように会社と逆方向の電車に飛び乗った私。箱根「ポーラ美術館」のセザンヌ〈砂糖壺、梨とテーブルクロス〉のまえで夢を諦めた記憶が蘇りーー。(「檸檬」)
日常の中の小さな幸せに寄り添う、珠玉の6篇。
内容説明
どこかの街の美術館で小さな奇跡が今日も、きっと起こっている。人生の脇道に佇む人々が“あの絵”と出会い再び歩き出す姿を描く。アート小説の名手による極上の小説集。
著者等紹介
原田マハ[ハラダマハ]
1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立、フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年「カフーを待ちわびて」で日本ラブストーリー大賞を受賞し、デビュー。12年『楽園のカンヴァス』(新潮社)で山本周五郎賞、17年『リーチ先生』(集英社)で新田次郎文学賞、18年『異邦人』(PHP研究所)で京都本大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
527
新型コロナウィルス対策購入シリーズ第十六弾、原田 マハは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。一枚の絵・美術館をモチーフにした短編集の佳作でした。オススメは、『聖夜』<白馬の森>東山魁夷です。願わくは、各短編の表紙もしくは、最後に実際の絵画の写真が欲しかった。2020/04/26
さてさて
422
六つの短編それぞれの主人公は、何かしら思い悩み、生きていくことを迷う日々に苦しんでいました。前に進むための一歩がどうしても踏み出せずにいました。 人には”啓示を受ける”瞬間、というものがあるように思います。それは他者の意見だったり、書物だったりと人によってもまた場面によっても多種多様です。そんな”啓示”の瞬間を”一枚の絵”に見た六人の主人公たちの転機が描かれたこの作品。原田さんの絶品のアートな世界の描写と、”啓示”を受けた主人公たちが再び前を向いて、顔を上げる清々しい瞬間を共有できる、そんな作品でした。2020/12/28
ウッディ
372
辛くて苦しい時、一枚の絵画に勇気をもらえる時がある。そして亡くなった大切な人との温かい思い出が一枚の絵画でよみがえる。そんな、絵画を中心に据えた6つの短編集。原田さんにしては、ほろ苦い話が多かったが、どの話も心がじんわりと温かくなるラストでした。特に「聖夜」と「豊穣」が良かった。物語に出てくる絵画は、どれも国内の美術館で観られる絵ばかりなのも嬉しく、美術館でゆっくりとお気に入りの絵を見つけてみたいと思いました。自分の人生にも、いつか大切な一枚が見つかるかもしれない。2020/10/27
射手座の天使あきちゃん
371
六つの美術館に展示された六つの美術品にまつわる六つ短編集。 ごく普通の人々が人生に悩んだり、悲しみに暮れたり、決断を迫られたときにそっと背中を押してくれたり、小さな掛け声で応援してくれるアートにまつわるショートストーリーでした。 よし私も「コロナに負けるな ファイト❕」(笑)2020/12/10
しんごろ
314
人生の岐路に立ったときに、絵を見ることによって一歩踏み出せる、そんな素敵な絵に巡りあいたいですね。たかが絵されど絵、時には心を揺さぶられ、時には感動し、時には元気をもらい、そんな絵があれば、ずっと絵の前に佇みたい。そういえば、新たな一歩を踏みだすまではないが、ずっとその場で佇んで眺めてた絵が、自分にもあったのを思い出した。切なくもあるが、優しさもある心が温まるマハさんの短編集。絵ではないけど、マハさんの作品を読んで、新しい一歩を進んでいきたい。2021/02/14