内容説明
小説家である「私」は、素敵で快適な生活を求めて自宅を大規模リフォーム。しかしここで、大きな問題が。台所が使えなくなり、日々の飯を拵えることができなくなったのだ。ポットやレンジを駆使するものの、餓えと渇きはつのるばかり。そしてついに「私」は、「外食ちゃん」となり、美味なるものを求めて飲食店の数々を経巡ることとなった…。有名シェフの裏切り、大衆居酒屋に在る差別。とろろ定食というアート、ラーメン丼に浮かぶ禅。文学が掴まえた、真なる美食。
目次
ミゼラブルな生活からの脱却
窮極の生活感軽減法
時間をずらすと
貧乏でもできること
居間をリビングに、台所をキッチンに
餓鬼道地獄の入口で
「チンするだけ」のトマトリゾット
一食分では満腹になれない
シェフの裏切り
立ち上がれ外食ちゃん〔ほか〕
著者等紹介
町田康[マチダコウ]
1962年大阪府出身。97年『くっすん大黒』で野間文芸新人賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞、2000年『きれぎれ』で芥川賞、01年『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、02年『権現の踊り子』で川端康成文学賞、05年『告白』で谷崎潤一郎賞、08年『宿屋めぐり』で野間文芸賞を受賞
西宮大策[ニシミヤダイサク]
1973年静岡県出身。広告や雑誌で活躍する写真家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペグ
62
外食を余儀なく迫られた町田氏。食を求めて彷徨う姿が切ない。なかなか思うようにならないけど最終的に見つけた坂の上のラーメン屋。美味しくなくて、不味くもない(ラーメン)に出会う。これは(とても大袈裟だけど)彼の魂の浄化を求めた旅だったのでしょうか? 改めて書名に納得!それにして相変わらずの妄想癖。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。2018/09/09
ネギっ子gen
53
【嘘は言いたくない。だから、はっきり言う。町田康は食レポも絶品だった】私は叫んだだろうか。実は叫ばなかった。どうしてだ。大歓喜と大号泣が起きたのだろう。だったら叫べばよいではないか。或いは、読後に叫ぶのが不細工だというのなら、多くの人がそうするように、「いいね」とか「ナイス」といった讃嘆の声をあげればよい。感に堪えぬ、といった絵文字を添えて。しかし、それができなかった。頭の中では興奮と落涙が続いていた。感情が溢れ、アドレナリンがどくどくと。私はなにも書き込めないまま、ただ自分の頭の中に立ち尽くしていた。⇒2023/10/05
うーちゃん
25
(よせばいいのに)お洒落でロハスな生活空間を求めて 自宅のリフォームを依頼したものの、その過程で台所が使えなくなったため、外食の旅へと出た町田さんの、暴走インチキグルメ紀行(ほめことば)。自虐と自己愛が炸裂し、被害妄想はとどまるところを知らず、ボケるわツッコむわ脱線するわで収拾はつかず、完全にカオスである。でもそこが めちゃくちゃに面白い。呆れかえりながらも笑いが止まらず、いつの間にか彼のテンポに引き込まれてしまう。奇才、という言葉がしっくりくるように思う。2014/11/21
skellig@topsy-turvy
22
連載物にありがちな「ちょいくどい」感はあるけど、"飯食うな"なる歌を出したこともある町田さんのアンチグルメエッセイ的風変わりな1品。全く美味しそうに思えない表現で料理を描写していく。「ずたずたに引き裂いた牛の筋肉と完膚なきまでに押し潰した草の根っこと…」中々満足に辿りつけず、妄想を繰り広げながらご飯を求めて放浪する様が町田節で良くも悪くも延々続きます。そういえば美味しい料理の描写は難しいけど、不味い料理の形容はバラエティに富むとも聞いたことあるなあ。巻末に載ってる食べ物詩も面白かったです。2015/12/14
kera1019
18
「素敵な生活をトコトンやる」から経巡して、とんでもない餓鬼道へと思考が歪んで町田流の六道が広がる。どこまでも追いかけてくる卑屈、焦燥、深読みに襲われても、どっか前向きなキャラクターが気持ち良かった。2013/11/06