内容説明
トンネルを抜けたら、ガードレールの切れ目をすぐ左折。雑草の生える荒地を進むと、小さな岬の先端に、ふいに喫茶店が現れる。そこには、とびきりおいしいコーヒーとお客さんの人生にそっと寄り添うような音楽を選曲してくれるおばあさんがいた。彼女は一人で喫茶店を切り盛りしながら、ときおり窓から海を眺め、何かを待ち続けていた。その喫茶店に引き寄せられるように集まる人々―妻をなくしたばかりの夫と幼い娘、卒業後の進路に悩む男子大学生、やむにやまれぬ事情で喫茶店へ盗みに入った泥棒など―心に傷を抱えた彼らの人生は、その喫茶店とおばあさんとの出逢いで、変化し始める。心がやわらかさを取り戻す、感涙の長編小説。
著者等紹介
森沢明夫[モリサワアキオ]
1969年、千葉県生まれ。小説、エッセイ、ノンフィクション、絵本と幅広い分野で活躍。「ラストサムライ 片目のチャンピオン武田幸三」で第17回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
324
岬の喫茶店を舞台にした連作集。さらっとしていて、あっというまに読み終えた。読み始めてすぐに、鼻の奥がツンとして涙が目に溜まって、どうしちゃったの私?という感じになって・・・特に泣くような雰囲気でもなかったのですが、この本の持つ「何か」に捕まってしまったような感じだった。コーヒーと音楽と海と魅力的なママ、こんな喫茶店が本当にあったら確実に私、通いつめてると思う。作中出てくる音楽のチョイスも素晴らしくて、それだけでも岬カフェの雰囲気が十分伝わってくる。優しくなりたい、そんな読後感だった。2012/02/22
みち
220
ちょっと切ないけれども、心温まるお話だった。「ハッピーのどきどき」なんて、上手いこと言うなあと思った。岬のカフェにきたお客さんたちそれぞれが、幸せになってほしいなぁと、悦子さんと一緒に祈りたくなった。美味しいコーヒーが飲みたくなった。もちろん素敵な音楽を聴きながら。2015/10/14
文庫フリーク@灯れ松明の火
200
♪優しさに包まれたなら きっと 目に映る全てのことはメッセージ♪森沢さんご自身の経験や、出逢った方達から生まれた想いを「美味しくなれ 美味しくなあれ」と丁寧に濾して、読者に優しい心が届くようブレントされているのでしょうね。心に残ったのは『間違いを犯す自由が含まれていないのであれば、自由は持つに値しない』『生きるって祈ることなのよ』読メユーザーならば景色と音楽と絵、もちろん悦子さんのコーヒー味わいながら、読書にどっぷり浸りたい隠れ家的喫茶店です♪2011/12/19
masa@レビューお休み中
193
出会いがあり、別れがあり、再会があり…。まるで、岬カフェに呼ばれるかのように人が集まってくる。虹さがしの冒険をしていた親子やツーリング中にガス欠になってしまった学生。はたまたお金に困って泥棒に入った男など、それぞれがそれぞれの事情を抱えて岬にひっそりと佇むカフェにやって来る。店主は柏木悦子さんという初老の女性。人里離れたこの地で、犬のコタローと二人だけで住んでいる。悦子さんが淹れるコーヒーは格別においしくて、訪れるお客さんは、みんなそのおいしさに驚きます。岬カフェでおいしいコーヒーが飲んでみたくなります。2013/02/15
hirune
183
色々なものを抱えた人たちが、ふとたどり着いた岬のカフェで悦子さんの美味しいコーヒーと人柄に癒されて自分の道を見出して歩き出していく物語でした。読んでいるうちに気持ちが前向きになっていきます。タニさんの話しはちょっと切ないけど、悦子さんに気持ちは伝わっていたのだから良いよね。仕方ないことだし。コタローは亡くなったご主人の代わりに悦子さんを守っていたのかな。ワンコに亡き夫の名前をつける未亡人ってめぞん一刻みたいね。2014/09/14