出版社内容情報
オキクルミというのは,アイヌの人びとにつ,生活の仕方すべてを教えてくれた神です。アイヌ語で語られたウパ荅シクマ(故事来歴)。 小学校低学年~中学年
内容説明
この物語は、アイヌ語で語られたウパシクマ(故事来歴)を現代の日本語に直し、さらに絵本の文章にするため手を加えたものです。いま私の住んでいる沙流川のほとりは、オキクルミの神が住まわれたという伝承の地です。ここでオキクルミの神は、アイヌに生活のすべてを教えてくれたというわけで、この話は、日本の民話でいえば「桃太郎」や「花さかじいさん」のように、私たちにはいちばんなじみの深いものです。アイヌモシリができたとき、神の国からだれかを派遣して、人間に生活を教え、神の存在や神の祭り方を教えることが必要になったわけです。そこで、オキクルミの神が受ける三つの試練(正しくは“無理難題”と訳した方がよい)は、人間の世界へ行って出合うことを、まず経験させておこうという意図だと考えられます。ですから、はじめの二つの試練に耐えたことで、人間の国で生活していけることが証明できたわけですから、三つ目の試練に失敗しても、神たちはオキクルミが人間の国へ行くことをとめなかったのでしょう。物語のおわりに、爆発がおこって、オキクルミは神の国へ戻りますが、ウパシクマの形として、神の国からきたものは、死ぬまで村にいることはなく、役目が終わると必ず神の国へ戻ることになっています。この物語も、その形をとっているわけです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yomineko@ヴィタリにゃん
62
人間界から遠く離れた神の国に住むオキクルミは、アイヌの国・アイヌモシリに行きたいと父神に言うが、非常に厳しい試練が待っているらしい。灼熱、極寒、そして決して笑ってはならないという試練。つい笑ってしまい失敗、嘆いていたがアイヌモシリへ行く事を決意し、人々に生活の術を教えた。しかし酷寒で鹿も死に絶えた。妹が人々に食べ物を配っていたが顔を見たいという男に手を引っ張られてから、2人共神の国へ帰ってしまう。代わりにノヤウタサブという神が降り立ち、今も沙流川でアイヌの人々を守り続けていると言われている。2024/07/05
モリー
42
アイヌの神話に登場する神々と、古事記に登場する神々とはまるで違う。アイヌ文化についてもっと知りたくなりました。先日、両親の様子を見に行った際、父が北海道土産として買ってきた熊の木彫りに再会。子供の頃は怖かったのですが、今見ると威厳があって神が宿っているように感じられました。図書館でこの本と出会えたのは偶然ではないという気がしました。2019/04/21
Smileえっちゃん
40
図書館本。アイヌの゙民話。アイヌ語を日本語に直し絵本にする為、手を加えられた本。人間が生まれたばかりの頃、遠く離れた神の国は争いもなくのどかだった。若い神の゙オキクルミ、冒険がしたく、アイヌの゙国に行きたいと父、母神にお願いする。それには神々の厳しい試練が待っている。人間世界に行っても困らないようにと。アイヌの゙国に行ったオキクルミはアイヌに生活の゙全てを教えた。アイヌの゙人達はこころ優しい人達だが、中には良くない人もいて、そのせいで大爆発が起こりオキクルミは神の世界に戻る。アイヌを守る神を残して。2024/03/25
ゆうゆうpanda
35
アイヌの神話では、神の国は人間の世界から遠く離れたところにあって、争い事もなく、のどかで静かな所だそうです。そこでは火をおこしたり、鮭を取るのに便利な道具が開発されていて、稗の栽培も盛んだそうです。やり甲斐を求めてアイヌの国にやってきたオキクルミ。アイヌに知恵をもたらして、人間の臭いのする神様という意味の『アイヌラックル』と呼ばれ、親しまれます。妹と共に、飢えた人々に食べ物を差し入れて廻るなど親近感を感じます。あぁそれなのに人間はお決まりの軽率な裏切り。それでも見守ってくれる優しい神話のヒーローです。2016/03/08
かおりんご
28
絵本。オキクルミがどうしてアイヌの国に来たのかが、分かりやすく描かれています。でも、アイヌ語が多々あるので、噛み砕かないと小さい子には無理そう。オキクルミに課せられた3つの試練のうち、最後の試練にはビックリ。アマテラスの岩戸のときもだけど、神様は裸になって踊り狂うことで、笑いをとるんだ、、、衝撃的です。2019/12/02