出版社内容情報
99の「恐怖症」と「偏執」を辞典形式で紹介する、文化史と心理の百科全書。
中世から現代に至るまでの人々の「恐れ」や「狂気」が、いかに時代の文化や政治、医療と交錯してきたかを、ユーモアと洞察を交えて描き出す。身体を洗うことを極度に避ける(洗浄恐怖症)、想像もつかない誕生秘話(風船恐怖症)など、本書はさまざまな心の偏りを取り上げる。クモを見ると身震いする(クモ恐怖症)、スマートフォンを忘れて不安にかられる(携帯電話依存症)、本を大事にしすぎる(愛書狂)など、私たちの心の奥にある「恐怖症」と「偏執」は、個人的でありながら、実は時代や社会によって作られたものかもしれない。
フロイトをはじめ心理学的・精神分析理論から、現代のデジタル依存、過剰な健康志向や不安症まで、個人の症状を超えた社会全体の不安のかたちが見えてくる。著名人や作家など事例、文化史的背景を含み、読み物として、また工夫されたビジュアルの面でも優れている。
本書は、本国イギリスのほか世界各国で翻訳出版されている。
フランス、ギリシャ、イタリア、中国、台湾、韓国、ポーランド、トルコ、スペイン、エストニア、ブラジル、タイ、ポルトガル、ドイツなど多数。
【海外書評の一部】
「著者は『最初の刑事』をベストセラーにしたのと同じ才能で、心理的な不安を詳細に描いている」(メールオンサンデー紙)
「人間心理に関する有益で機知に富んだ視点がユニークで魅力的」(カーカス・レビュー)
「恐怖と狂気を社会・文化・医療の歴史を通じてたどる魅力的な辞典」(ガーディアン紙)
装幀:コバヤシタケシ
【著者紹介】
ケイト・サマースケイル
ロンドン生まれ、幼少期を日本とチリで過ごす。さまざまな新聞や雑誌で勤務した後、2005年に『ウィチャー氏の疑惑』を発表して作家デビュー。これまで数々の文学賞を受賞し、現在はブッカー賞を含む文学賞の審査員、王立文学協会フェローを務める。イギリス在住。著書に『ネヴァーランドの女王』(新潮社)、『ホエール・ケイの女王』(サマセット・モーム賞)、『最初の刑事』(早川書房、サミュエル・ジョンソン賞ほか)、『邪悪な少年』(エドガー賞ベスト・ファクト・クライム賞)、『アルマ・フィールディングの亡霊』(ベイリー・ギフォード賞ノンフィクション部門最終候補)など。
【著者紹介2】
田内志文
文筆家、元スヌーカー選手、シーランド公国男爵。翻訳書にジョージ・オーウェル『新訳 動物農場』(角川文庫)、ジョン・コナリー『失われたものたちの本』(創元推理文庫)、エドワード・W.バートン=ライト『シャーロック・ホームズの護身術バリツ』(平凡社)など多数。主な偏執に蒐集癖、誇大妄想狂がある。



