内容説明
可笑しくて悲しく、少し残酷。近くて遠いアジアの島々に伝わったお伽噺。戦争作家と呼ばれた火野葦平が従軍中に翻訳。
著者等紹介
火野葦平[ヒノアシヘイ]
1907年、福岡生まれ。本名玉井勝則。早稲田大学英文科を卒業前に兵役に服す。除隊後、家業の沖仲仕組頭を継ぐ。労働運動に従事し検挙されて転向。後、地元の同人誌に参加。1937年、日中戦争に兵士として従軍中『糞尿譚』が芥川賞を受賞。従軍記『麦と兵隊』『土と兵隊』『花と兵隊』の「兵隊三部作」がベストセラーとなる。太平洋戦争中に報道班員として活躍。戦後は公職追放指定を受け「戦犯作家」とされた。1960年死去
川上澄生[カワカミスミオ]
1895年、横浜生まれ。17歳のとき木下杢太郎著『和泉屋染物店』の口絵を見て木版画制作を始める。22歳でカナダへ渡り4か月過ごした後、アラスカの缶詰工場で働く。1921年栃木県立宇都宮中学校の英語教師となる。1945年北海道疎開。1949年栃木県立宇都宮女子高等学校の講師となる。南蛮と文明開化をテーマとした作品の制作を続ける。1972年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
55
フィリピンの民話にもグリム童話、五日物語、ギリシャ神話、アフリカの民話などの要素が散りばめられており、面白い。だが、編者の火野葦平氏が零すようにフィリピンの民話にはずるい奴が成功したり、無関係な人間が酷い目に遭うなどの理不尽なものが多い。特に七人のバカの物語は色んな意味で酷いです。しかし、解説でこの民話の根底にあるのは大国の支配による理不尽や腐敗に対するフィリピンの反骨精神と知ると納得。そして結ばれる運命だった恋人達にちょっかいを出した為に罰せられる神様は御咎めなしの神話から見ると中々、稀な事例で新鮮だ。2024/05/07
NAO
54
火野葦平がまとめたフィリピンの民話23篇。「ユアン・プソン・タンビ・タンビと猿」は、「長靴をはいた猫」と全く同じといっていい話でラストが少しだけ違う。2つの「猿と亀」はどちらも猿蟹合戦のような展開で、猿より知恵が勝る亀が最後には勝つ。「三人兄弟」は、貧乏な家の三人兄弟が家を出、ある才能を身につけて戻り三人で難題を解決するという、類話の多い話。「アモル・セコ草」は植物の誕生譚。人が植物になる神話・民話は多いが、この話は初めて見た。「悪魔と風来坊」は悪魔との知恵比べが面白い話。2024/06/12
tetsu
1
図書館本。フィリピンに伝わる民話や伝説が集められています。ヨーロッパの神話や童話の影響を受けたであろう物語も収められており、文化の伝搬性という言葉を強く感じました。 「アモル・セコ草」という民話がとくに面白かったです。幼なじみ(人間)の恋路を邪魔した神さまが、ほかの神さまから罰として、アモル・セコ草という植物に姿を変えられてしまうというストーリー。 人が神罰を受けるお話はよく見聞きしますが、このパターンは初めてで驚きました。2024/07/17