内容説明
独逸が生んだ怪奇・幻想・恐怖・耽美・諧謔・綺想文学の、いまだ知られざる傑作怪作奇作18編を収録。“人形”“分身”“閉ざされた城にて”“悪魔の発明”“天国への階段”“妖人奇人館”不可思議奇妙な6つの匣が構成する、空前にして絶後の大アンソロジー。ほとんど全編が本邦初訳!!
著者等紹介
垂野創一郎[タルノソウイチロウ]
翻訳家。1958年生まれ。東京大学理学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
孤独な建築家の本棚
感想・レビュー
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HANA
67
独逸、墺太利の怪奇、幻想小説を収録した一冊。人形や分身、閉ざされた城に悪魔の発明とテーマ別に分けられているが、どのテーマも本書を読む人間には琴線に触れずにはおられないようなものばかりで、収録作全て興味深く読める。編者の好みか怪奇小説というより幻想文学の方に比重が置かれている気もするが。前述したように収録作全て面白いのであるが、個人的に好みは怪奇寄りな作品。「伯林白昼夢」は紛れもない名作だが、「ある肖像画の話」等も好み。逆に幻想に比重を置きすぎているのはよくわからないものも。怪奇小説好きなら一読されたい。2021/07/30
tosca
34
図書館の書架に並んだ本の中で、一際装丁が立派で美しく妖しげだったので思わず手に取ると、こんなタイトル。読まずにはいられないだろう。ほぼ知らない作家ばかりだったドイツ・オーストリア等の怪奇幻想短篇小説集。狂気過ぎたり気持ち悪過ぎたりして理解不能な作品もあったが、何と言ってもこの立派な装丁、相当なお値段なので買うことは無かったと思うが、気になり過ぎていつかは借りていただろうとは思う(笑)2023/02/14
内島菫
27
カフカ絡みで有名なマックス・ブロート以外はすべて知らない作家だった(何かのアンソロジーで別の作品を読んだことのある作家がいたかもしれないがはっきり覚えていない。但しラーテナウの「蘇生株式会社」はどうも読んだことがあるような気がしてならない)。なので短編各々のタイトルページの裏にある作家の紹介文がある意味最も興味深く読めたが、やはりそれは訳者の通り一遍でない埋もれた作家や作品への偏愛に負うところが大きいといえるだろう。そういう意味で本書にとっては「怪奇」はツマで、「骨董」がメインの刺身のようなものだと思う。2019/07/23
踊る猫
26
古典から現代まで、マニアックな(悪く言えば渋過ぎる)作家たちの短編が収められており、なかなかこちらを飽きさせない作りとなっているように思われる。文章が妙に鯱張っていない所が良い。幻想文学の味わいを出そうとして遮二無二難しい言葉を使って翻訳するのではなく、ナチュラルな言葉で翻訳されているのでとても読みやすいアンソロジーとして仕上がっているように思われた。知らない作家ばかりだったのだけれど(「恋人」は森鴎外による既訳を読んでいたのだけれど)、ここから読書の幅を広げていくのも手かなと思わされた。侮れない本である2019/07/30
あーびん
23
美しい装丁に包まれた、ほぼ全編が本邦初訳の独逸怪奇幻想奇想文学アンソロジー。『ある世界の終わり』の海に沈みゆく屋敷での最後の夜会のイメージや『恋人』のゴシックロマンSFなど、懐かしくも奇妙な世界観に惹かれた。あとがきにて、洋古書店の棚ざらしの段ボールの中から本書におさめられた物語を「捨て猫を拾うように」見つけ出したという編者には感謝を禁じ得ない。古城とか幽霊だけではない独逸の底力を感じる重厚な傑作短編集。2019/08/31