内容説明
「あたしがやるようにやってごらん、割れ足さん!」少女の声に応えてすばやく答えが返ってきた。トン…トン…トン…。雪深い山中で道に迷ったベイジル・ウィリング夫妻が一夜の宿を求めた屋敷“翔鴉館”には、そこで眠る者は翌朝には必ず死んでいるという開かずの部屋があった。その夜発生したポルターガイスト騒ぎのあと、不吉な伝説を打ち消すため、くじで選ばれた男がその部屋で寝ずの番をすることになったが、30分後、突如鳴り響いた異常を知らせる呼び鈴の音に駆けつけた一同が目にしたのは、伝説どおり謎の死を遂げた男の姿だった。H・R・F・キーティング“名作100選”にも選ばれたヘレン・マクロイの後期代表作。
著者等紹介
マクロイ,ヘレン[マクロイ,ヘレン][McCloy,Helen]
1904‐1992。ニューヨークに生まれ、10代の頃から文才を発揮、フランスに留学して、新聞の通信員等をしながら、小説や詩、評論を発表。帰国後書き上げた精神分析学者ベイジル・ウィリングを探偵役としたミステリ第1作「死の舞踏」(1938)は、本格物の佳作として評判を呼んだ。本格ミステリとサスペンスの分野で優れた作品を残し、ミステリ評論でも活躍、短篇の名手でもあった
好野理恵[ヨシノリエ]
東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。翻訳家
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
22
ポルターガイストが起こったとされる事柄を模倣した直後にポルターガイストらしき現象が。事の真偽を確かめるべく、因縁のある部屋で泊まっていた客は死亡していた。果たしてこれは霊の仕業か?フォーリーの「家族だからと言って愛せる訳がない」という言葉は、子供の出来を反映した愛情の順位付けや虐待などを考えると言い得て妙です。「大人は馬鹿だ」と思い、「自分たちは違う」と勘違いしている脳味噌と自尊心だけが肥大した悪餓鬼にげんなりし、ラストの後味の悪さと言ったらありません。その分、ペイジル夫婦の仲の良さに和ませて戴きました。2013/08/03
ホームズ
22
正直あまり・・・。物理的なトリックに関してはそれなりに納得できるけどそこに至るまでの心理的な動きに関しては少し疑問。あまり納得ができる感じでは無かったな~。子供たちの話から事件が起きるまでの展開は結構良かったと思うですけどね。色んなキャラクターが登場してるんですけど少し持てあました感じがあったな~。2013/05/28
たち
18
開かずの部屋があったり、不気味な鸚哥がいたり、極めつけはポルターガイスト騒ぎの後に殺人が起こるという、一種独特な雰囲気で始まった事件ですが、殺人犯の動機はあまりにも古典的で拍子抜けしました。しかし、そこにこの話の真髄があるのかなあとも思いました。2016/11/13
星落秋風五丈原
18
「あたしがやるようにやってごらん、割れ足さん!」翔鴉館(クロウズ・フライト)の住人フランシスの一人娘ルシンダの声に応えてすばやく答えが返ってきた。トントントン。これはルシンダが友達のヴァーニャと組んだ、複雑な思いを抱いていた義母フォリーに対するいたずらのはずだった。ところが、その直後家にいるヴァーニャから電話が。ルシンダは失神する。H・R・F・キーティング名作100選にも選ばれたヘレン・マクロイの後期代表作。2007/04/23
翠埜もぐら
17
呪われた部屋に泊まった者が翌朝死んでいた。と言うのは大好きな古い怪奇小説によくある設定で、たいてい良からぬ因縁のせいで終わるのですが、さすがにミステリーはそこで終わらせられません。犯人探さないと。しかし、消去法であっさり犯人の見当がついてしまってトリックとしては今一つと言うところでした。そして今回思春期の男の子と女の子が狂言回しと言うか、引っ掻き回しと言うか、殺人事件という状況に不安定なお年頃を持ってくると一気に落ち着かなくなりますね。事件後の二人がどうなったか言及が無いのが納得できませんでしたが。2024/10/28