内容説明
東アジア100年の近代史を、ひとりの女性革命家の「自伝」をとおして書き変えた壮大な挑戦。民族と世界史、ローカルとグローバル、ミクロとマクロが緊密に織りなされた、台湾「国」文学を超えた達成。わたしに即き、わたしから離れる複数の「わたし」と「わたしたち」からなる重層的な文体の実験。性と政治が結びついていることを、血と汗と体液の肉感をもって描き出す。だれからも忘れられた「島」の、だれからも忘れられた「女」の視点から、いま、世界文学が誕生する。
著者等紹介
李昂[リーアン]
1952年、台湾の鹿港に生まれる。中学時代から小説を書きはじめ、1968年に作家としてデビュー。現代女性の内面や性、そして社会の伝統との葛藤をテーマに創作を続け、1983年に発表した『夫殺し』が大きな反響を呼んだ、現代台湾を代表する女性作家
藤井省三[フジイショウゾウ]
1952年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程修了。現在、東京大学文学部教授。文学博士
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感想・レビュー
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パヤパヤ
1
「肉屋殺し」を昔英訳で読み、この作品も是非読みたかったものの訳がない。と思ったら日本語訳発見。凄まじい前衛性と批評性を携えつつ、台湾という国の歴史、特に日本との関係を個人の生活の中で密接に読み取る意義。こういう小説の訳を男子の翻訳で読ませるのはさすがに企画の段階の手落ち、或いは文学の脈略を無謀に無視している、或いは無知。翻訳に難があるわけではないとはいえ、アジアというフェミニズム無風地帯でその構図は即日本内女子の地位の低さに通ずると思われてならない。2009/09/01
まみ
0
女性性の使い方。生々しい。ジェンダー的にも、小説としてもかなり質が良い。2013/05/27