内容説明
18世紀後半、アイルランド貴族出身の二人の女性が、一見奇矯とも思える友情に結ばれて駆け落ちをする。当時エレナーは39歳、セアラは23歳だった。それから50年間、一晩として離ればなれになることなく、北ウェールズの小村スランゴスレンに隠棲した。彼女たちの友情は「ロマンティックな友情」と呼ばれ、時にレズビアンとして好奇の目に晒されることもあった。結婚もせず、男装でいることもまた、社会の常識を逸脱していた。その一方で、スコットやワーズワスのような著名人が辺鄙な小村へ二人に会うため、わざわざ足を運んだこともまた事実である。果たして、この「ロマンティックな友情」が意味する愛の形とは?結婚より自由を、富裕より清貧を、社交より孤高を、安定より波乱を選んだ二人の女性の歳月。
目次
第1章 貴婦人の出奔
第2章 イギリス一八世紀と「ロマンティックな友情」
第3章 選択する女たち
第4章 晴耕雨読の日々
第5章 日誌を読む―身辺雑記
第6章 日誌の中の「狂王」と「革命」
第7章 文学の中のプラース・ネウィズ
第8章 プラース・ネウィズの終幕
著者等紹介
蛭川久康[ヒルカワヒサヤス]
1931年東京生まれ。東京大学教養学部教養学科イギリス科卒。現在、武蔵大学教授(英文学・イギリス文化史)
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感想・レビュー
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うえ
4
「スランゴスレンの町は、イングランドの古都チェスターから南西へおよそ40km、西から流れて来たディー川が、この辺りでにわかに川幅を狭め、丘陵が両岸にせまり、緑濃い渓谷美をみせる所に位置する北ウェールズの町である。…ウェールズは陸続きのイングランドより海を渡ったアイルランドに、つまりケルト文化圏に民族的にも文化的にも断然ちかい…町名はllanとcollenの結合で「聖コレンの教会」の意味という。そしてこの町名は、7世紀にこの地に定住した隠修士、聖コレンに献じられた教会の名をそのまま町名にしたといわれる。」2025/03/13
いとう
0
二百年以上前に女性同士の隠棲生活を送る女性たちがいたのに驚き。吉屋信子も先進がいたのは知っていたのか。フランス革命起きてる時の当時の雰囲気がわかっていい。2025/04/20