内容説明
「すでに、詳細なアメリカ文学史がさまざまな視点から数多く書かれており、精神分析学に基づくものまである。また、文学を社会学の一交流にしようと企てる文学史もたくさんある。我々の目的はそういうことではない。我々にとって肝要なのは芸術的要素である。」ポー、ホーソン、メルヴィルから探偵小説、SF、ラヴクラフトまで。ブエノスアイレス大学の教授として英米文学講義を担当していたボルヘスが情熱をこめて語るアメリカ合衆国の文学の歴史。
目次
起源
フランクリン、クーパー、歴史家たち
ホーソーンとポー
超絶主義
ホイットマンとハーマン・メルヴィル
西部
十九世紀の三詩人
物語作者たち
国外流浪者たち
詩人たち〔ほか〕
著者等紹介
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年生れ。東京大学文学助教授
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感想・レビュー
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三柴ゆよし
10
普通すぎルヘス。2018/02/04
roughfractus02
5
宗教的宇宙に守られていた真理が人間化する近代以後、人智の届かぬその普遍性の断片を小説や物語に見出す著者は、近代に興った新大陸の文学の歴史からその諸断片を拾い上げ、真理の普遍的ビジョンを未来の文学に投げかける。それゆえこの講義は、過去を網羅した既成の文学史を対象としていない。本書は、言葉が情報になり、知能が意識を超えて人間知性を超え、未来へ向かう普遍性の歴史を、ポー、ホーソーン、メルヴィルから推理小説を経てラヴクラフト、SFへと辿る。技術によってそれを実現しようとする新大陸に著者は自らのビジョンを投影する。2020/02/23
Edo Valens
3
ボルヘスは著者の人生から作品を捉えるのが好きなようで、作家の人生についての興味深い記述が多い。また、作品の巧さと読者の感動は比例しないとの哲学も読み取れる。スペイン語で書かれた本が、米文学の翻訳者によって翻訳されるというのは奇妙だが、内容を考えると妥当でもあるのだろう。タイトルに含まれる「北アメリカ」という言葉が、私達にこれが南アメリカで書かれた文学講義であることを意識させる。本書の中の文学史は、当然の事だが、ボルヘスの生きた時代までで止まっている。書き留められたまま動かない歴史はどこかロマンティックだ。2015/07/31
つまみ食い
2
訳者解説にあるように、非常にコンパクトな米文学史。逆にボルヘスの文学論などを期待するなら、『七つの夜』や『語るボルヘス』のようなものは得られない2021/08/26
Nobody1
2
コンパクトアメリカ文学史。柴田先生によれば、かなりまともなラインナップだそう。英米文学を教えていたのだから不思議ではないかもしれない。個人的にはポーに関する記述が印象的だったし、フォークナーを天才だと言っているのも気になった。圧倒的な知識量に驚かされる。2013/11/28