感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
∃.狂茶党
10
かなり血気盛んで、いわゆるボルヘスらしさはまだ薄いものの、あまり20代の若者が書いたとも思えない文章。 ”統合された全体としての自己は存在しないのだ。” 記憶の人ボルヘスは、想起とともに新たに編み出されるものを意識している。 ”全てが美しい、というか、すべてが、あとになってみれば美しくなることが多い。美しさというのは、死よりもさらに確実な定めなのだ。”2022/09/28
roughfractus02
7
著者は20代で書いた3冊の評論集『審問』『わが待望の規模』『アルゼンチン人の言語』を絶版とし、全集からも除外したという。本書はその3冊にある「ジョイスの『ユリシーズ』」から「アルゼンチン人の言語」までの19篇からなる。欧州育ちの著者が帰国してアルゼンチン人の自己に目覚め、前衛詩人として文を書くという生硬な姿勢が拒絶の理由とされる。が、一読して後年のテーマと異なる点は少ない。むしろ、視力の弱まる後年、記憶のために韻律や修辞を重視した著者は、自らも巻き込む修辞の魅惑に無頓着な若き日の文体を恥じたように思える。2020/02/26
サイトー
1
『審問』『わが待望の規模』『アルゼンチン人の言語』から選出した19編の初期評論集。ある概念を抽出し、書き手の立場に基づいた視点から論点を整理する評論というよりは、若きボルヘスが晩年に至る思考の大伽藍を芽吹かせるまでの思考過程を帯びた散文。その意味では自伝的であり、それ以上ではない。この中だと民衆詩に内在していた隠喩の用法に着目しいわゆる想像力がどんな表象に定着しているか分類しようと試みた「隠喩点検」か。無限への羨望を見るに、小説家が詩人になり損ねた書き手なら彼は哲学者になり損ねた詩人という印象を受けた。2022/10/07
a.k.a.Jay-V
0
刃の言葉で斬る詩人。2013/07/30
askmt
0
スペイン語ローカルの詩人や作家が頻出してイメージが掴めないが、そこをすり抜けてくるものが重要なのだろう。2011/08/16